経済地理学年報
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広域合併農協の事業展開と花き生産・販売体制の地域的差異 : 諏訪みどり農協管内を事例に
両角 政彦
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2008 年 54 巻 2 号 p. 83-106

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抄録

本稿では,広域合併農協の事業展開と旧農協管内ごとにおける花き生産・販売体制の地域的差異をとらえ,農協の広域合併が与えた影響を明らかにした.農協の広域合併にともない諏訪みどり農協は,旧農協ごとの生産事業の差異に対し,生産を推進する品目を限定し生産の機会を平等にする事業を展開し,旧農協ごとの販売事業の差異に対しては,共選出荷を最重視し旧農協間の格差を縮小する事業を展開してきた.この事業展開は花き生産者の生産品目の選択,出荷形態の選択,共選出荷品の市場評価,花き生産の継続などに対し,旧農協管内ごとに異なる影響を与えた.花き生産・販売体制の地域的差異が生じた背景には,連作障害の発生による新たな主要品目の必要性,経営規模の拡大に向けた副次的品目の必要性,大型の生産施設における既存品目の生産継続の必要性,共選出荷に対する認識の差異があった.農協合併は花き生産者に,新品目の導入機会の拡大や集出荷所の相互利用というメリットをもたらしたが,逆にデメリットとして,生産施設の差異に基づく品質格差と,その結果としての共選単価の低位平準化ももたらした.

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© 2008 経済地理学会
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