本研究では,名古屋大都市圏を事例として,アルバイト求人情報誌を発行する事業者が,どのようにして求人情報を収集し,流通させているのかを検討する.需要量の多い大都市圏では,当該大都市圏の事業を統括する本社もしくは支社を都心に,営業所を郊外の拠点となる都市にそれぞれ設けて,求人企業の獲得に努めている事業者が多い.営業業務を代理店に委託する事業者の場合でも,大都市圏内の都市階層に応じて代理店の数を調整している.営業員は,時間的,空間的な制約上,自らの所属する営業所や代理店に近いところから営業活動を行うことが多くなるため,求人企業の分布パターンは,営業所や代理店の立地パターンと類似したものになる.求人情報の流通をみると,店舗で販売される有料誌に比べ,求人情報誌発行事業者が自ら配布地点を設定できる無料誌には,各事業者の戦略が明瞭に反映される.都心の配布地点は,広域から多くの人が集まる鉄道・にバスターミナルなどの施設であることが多く,対照的に郊外のそれは,近隣居住者が利用することの多いコンビニエンスストアなどが多い.都心には,求人情報掲載範囲の異なる各郊外セクターの無料誌の配布地点が互いに重複する地区があり,そうした地区は,各郊外セクター居住者が都心に流入する際の通過地点に相当する.このように,求人情報誌発行事業は,都市階層や大都市圏構造に沿う形で展開していることが明らかになった.
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