抄録
世界遺産登録を契機とした地域活性化に関するわが国の研究は観光客動向を類型化し,その諸特徴を明らかにすることを中心テーマとしている.また,その中ではオーバーユース等による環境・景観破壊等も取り上げられている.その対応としては保存と活用の両立論が多いが,両立論が実現困難との指摘も見られる.平泉の遺跡群は世界遺産登録以前から観光地として知られていたが,登録による観光客増加が見込まれ,景観に及ぼす影響も予想される.ただ平泉では同時に景観保護やそれにもとづくまちづくりも進められている.平泉の今後は世界遺産の保存と活用の両立論で進めるのか,保存を前提とした活用とするのかによって異なる.