経済地理学年報
Online ISSN : 2424-1636
Print ISSN : 0004-5683
ISSN-L : 0004-5683
研究ノート
職業別純移動にみる東京圏の居住地域構造
中澤 高志
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 62 巻 1 号 p. 39-56

詳細
抄録

    本稿では,人口移動を居住地域構造を変容させるプロセスと位置づけ,男性の職業別,年齢階級別の純移動によって東京圏の人口20万人以上の市区を類型化し,その配置を検討する. K-means法のクラスター分析を適用したところ,対象となった90の市区は9類型に分類された.各類型の配置から得られた知見は以下のように要約できる.都心およびその周辺では,ホワイトカラーの転入超過が顕著である.山の手および内部郊外においては,ブルーカラーとグレーカラーの転出超過が目立つ.都心距離が30~40 kmの郊外では,いずれの職業についても転入超過であるが,ブルーカラーとグレーカラーの転入超過が大きい.職業別,年齢階級別の純移動に基づく地域類型の配置は,社会経済的地位によって把握される東京圏の居住地域構造が都心を頂点とした同心円構造を強めているという先行研究の結果と整合的である.ただし,グレーカラーの分布がむしろセクター構造を強めていること,県レベルでは男性の職業別,年齢階級別の純移動の傾向が異なっていることなどから,特定の職業に焦点をあてた研究や異なる空間スケールにおける研究の蓄積が求められる.

著者関連情報
© 2016 経済地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top