経済地理学年報
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中山間地域における地域資源の活用実践と住民の対応
中條 曉仁
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2017 年 63 巻 2 号 p. 171-181

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抄録

    本稿は,中山間地域において実践されている地域資源の活用による都市農村交流を取り上げ,その実践を可能にする条件を地域住民の対応から検討した.
    対象とした静岡市中山間地域では,「食」や「景観」あるいは「人」といった地域資源を活用して,都市市場をターゲットとする都市農村交流が展開されている.事例の「縁側カフェ」では,中高年の女性住民が担い手となり,住民の知恵や技術が生かされることにより,都市から多くの来訪者を得て都市農村交流を図ると同時に,住民の生活上の楽しみが拡大し,集落の活性化に結びついている.また,決して大きくはないが,事業実践から得られる収入は高齢者世帯にとって貴重な収入源にもなっている.
    このような地域資源の活用が実現している背景には,「集落ぐるみ」でムラの内部にまで来訪者を受け入れる住民の合意形成がなされたことが大きい.それを可能にした要素として,伝統的に村落社会の代表的地位にあったイエを出自とするM氏が主導して事業に信用力が付与されたこと,女性住民を実践の主たる担い手として位置づけたことにより彼女たちが連帯して賛同の声を上げ,その配偶者たる男性住民にも作用していったことが合意形成に寄与したと考えられる.さらに,中山間地域等直接支払制度など集落に対する補助金を事業費に活用し,各農家に資金拠出を求めなかったことなども指摘できる.また,行政に加えて事業実践に寄り添うアドバイザーの存在,住民の他出子や親族など集落内外にある多様な人々の参画も,事業の持続性という面で重要な役割を果たしていた.ただし,現在までのところ「縁側カフェ」が茶産地の振興という本来の目的に直接結びついていないため,地元で生計手段を確保することが課題となっている.

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© 2017 経済地理学会
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