2017 年 63 巻 3 号 p. 201-216
経済活動の広がりに応じた圏域設定や都市間結合について,多くの既往研究が存在するが,通勤通学のような派生的な 需要に基づいて記述されるものがほとんどであり,必ずしも実態を適切に反映していない.これに対し本研究では,金融 機関の利用や取引関係といった企業間関係に基づく圏域設定を行い,それに基づく都市間結合の記述を試みた.結果,金 融関係は取引関係と比して近接地域と強い紐帯をもつことが明らかになった.東京一極集中の傾向が強いが,大阪や福岡 が一定の中心性を有していることが示された.取引関係に着目すると,福岡や仙台などでは自地方の諸都市との間の発注 と受注に大きな格差が確認された.金融関係に着目すると,大都市集中傾向は相対的に弱く,県境を越えた都市間の依存 関係も確認できた.また,中小企業によって結ばれた取引にのみ着目すると一極集中傾向は弱まった.