2018 年 64 巻 2 号 p. 129-137
本稿では東日本大震災,とりわけ東京電力福島第一原子力発電所事故の被害が今なお残る福島県の復興過程における諸問題を振り返ることで,熊本震災復興への示唆を考える.熊本震災の復興のあり方をめぐって,東日本大震災から学ぶべき教訓は「ふるさとの価値」再生を保障する視点を震災復興政策にきちんと位置付けなければ,少子高齢社会においては被災者の生活再建や被災地の復興が費用対効果の低いものにとどまらざるを得ないということにある.東日本大震災後に実施された創造的復興政策は,財政投資が被災地域へのインフラ整備に過度に偏ったものとなったため,被災者の生活再建への保障が十分ではなかった.そのような政策は,熊本震災復興でもかえって人口の域外流出を高めてしまう恐れを含んでいる.