経済地理学年報
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大会報告論文
バブル崩壊後の札幌市の産業構造・都市構造の変化と支店経済の動向
平澤 亨輔
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2018 年 64 巻 4 号 p. 319-334

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抄録

    本稿は,地方中枢都市の一つである札幌市についてバブル経済崩壊後の時期を中心としてその経済構造,都市構造,支店経済の現状と変化について分析を行うものである.
    地方中枢都市の従業者数は1996年から2001年の間に4つの都市すべてで減少した.従業者数の減少率は4つの都市で異なり,福岡市,仙台市のグループが札幌市,広島市のグループよりも減少率が低く,二つのグループに格差が生じた.札幌市については,建設業や対事業所サービスなどで福岡市などよりも寄与度が低く,格差が生じる原因となった.札幌市についてはその後の従業者数の増加率で見ると他の都市との格差は小さくなっているものの,福岡市に比べて増加率は低い.2009から2014年の期間においては小売業,飲食サービス業などで寄与度が低くなっている.
    札幌市の人口分布は,1995年以降,中心部の人口が増加する一方,郊外や周辺都市の人口は停滞,減少している.しかし,従業者の分布は,1996年から2006年の期間では,最も周辺の地域で増加しているものの,中心部では減少しているという人口分布の動きとは異なる現象が見られる.これはバブル経済崩壊後,中心部のオフィスなどの集積が低下したことが原因といえる.しかし,2012年から2016年の期間では中心部の従業者数の減少率は周囲の区域と比べて小さくなっている.
    札幌市の小売吸引力指数は,1996年より低下しており,市の中心部に位置する中央区も2001年より低下している.このことは札幌市の小売業の中心性も低下していることを示している.
    支店経済については,1990年代の後半に支所・支社・支店の従業者数は減少し,筆者が行ったアンケート調査からも札幌支店の位置づけの低下が見られる.しかし,事業所・企業統計調査の従者数の動向や筆者が行ったアンケート調査による立地の方向性についての回答,札幌支店の位置づけの回答からも規模や権限を拡大する支店数が縮小する支店数を上回る傾向が見られる.札幌市の支店経済は一時の勢いはないが状況は改善してきているといえる.

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