マーシャル的集積について活発な議論が繰り広げられる中で,中間組織の役割に対する関心が高まりつつある.戦前期の中小企業政策は同業組合政策が根幹をなしており,工業組合政策によって一大転換が図られたとされる.しかし,目下のところ同業組合に関心が集中し,産業組合や工業組合にまで関心が及んでいない.そこで,本稿では,輸出部門である羽二重産業を例に,それぞれの組織の制度的特徴と関係性とについて検討した.
同業組合は自由主義経済の象徴であり,市場メカニズムの円滑な機能を通じて粗製濫造を抑制し,取引市場を拡大させるための組織であった.ただし,組合員による共同事業は禁じられており,この点を補ったのが産業組合という協同組合であった.これに対して,工業組合は統制経済の象徴であった.工業組合も協同組合であり,産業組合と事業内容に大きな違いはなかったが,基本的な目的は生産統制によって市場を崩壊から防ぐことにあった.