経済地理学年報
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特集論文
留学生によるトランスローカルな起業
──大分県別府市の事例──
中澤 高志
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2026 年 72 巻 1 号 p. 87-108

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抄録

 本稿は別府における留学生起業者を対象に,彼/彼女らのライフコースや価値観に即して,その起業の契機や事業の特徴を検討した.別府はアジア太平洋地域をめぐる留学生のモビリティにおけるハブであり,大学を核に留学生起業を促す環境が形成されつつある.本稿では,留学生起業者をトランスナショナル・トランスローカルな主体と捉え,ナショナルな制度とローカルな条件に規定されながら,出身国・地域と日本・別府を結ぶ事業を展開していく過程を分析した.多くの留学生起業者は,来日時点で起業を明確に志しておらず,日本の労働市場で適職を得にくく,出身国でも留学経験を生かしにくい状況のなかで,自らの定位を模索する過程で別府での起業に至っている.別府には自治体による支援制度があり,多文化共生のインフラが整いつつあるが,彼/彼女らは多様な選択肢から最良の道を選んだというより,経路依存的に起業へと向かったといえる.別府における留学生の起業は,成長至上主義のスタートアップとは異なり,自分と家族の生活基盤を築く手段としての性格が強い.事業拡大を模索しつつも,出身国と日本をつなぐトランスナショナルな事業という軸は維持され,単なるエスニック・ビジネスではなく,両地域の架け橋や社会課題の解決を志向する傾向がみられる.これは留学生起業者が多文化共生都市・別府に自らを定位し,その一員として都市を支える存在となっていることを示している.

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