日本腹部救急医学会雑誌
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原著
肝胆膵領域の術後肺塞栓症の検討
加藤 賢一郎高田 忠敬
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2007 年 27 巻 3 号 p. 447-450

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抄録

欧米に比べ, 本邦の肺塞栓症の頻度は低いが, 2004年に本邦の予防ガイドラインが作成されて以来注目されている。なかでも肝胆膵領域の手術は侵襲が高く, 術後の肺塞栓症の発生は致命的となることもある。われわれは, 肝胆膵領域の術後肺塞栓症15例を経験し, 救命可能であった生存群と死亡した死亡群を比較検討した。検討項目はBody Mass Index (以下, BMI), 手術時間, 術中出血量, 術後発症日および初発症状, 抗凝固・血栓溶解療法に伴う合併症, 予防法とした。術後発症日は死亡群で有意に (P<0.05) 遅延していたが, それ以外の因子では救命率に有意差を認めなかった。肝胆膵術後の肺塞栓症に対し, 抗凝固・血栓溶解療法は投与量の調節で安全に施行可能であった。術後肺塞栓は適切な予防をしても生じるため, 一般の消化器癌と同様で, 術後の慎重な管理が重要であると考えられた。

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© 2007 日本腹部救急医学会
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