日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
遅発性脾破裂の1例 : follow-up造影CTにおけるcontrast blushの意義
柳川 洋一金子 直之
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2007 年 27 巻 3 号 p. 541-545

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抄録

鈍的脾損傷の初療における治療方針の決定には, 循環動態が最も重要であるが, 近年は造影CTにおける造影剤漏出像に加え, contrast blush (以下, CB) が報告されている。今回遅発性にCBが出現し, 短時間で脾臓が破裂した症例を経験したのでその意義を検討した。症例は65歳, 男性。階段から転落し受傷。他科に入院し, 受傷15時間後にCTで脾損傷・腹腔内出血が認められ当科転科。CTでは脾内の低吸収域と腹腔内出血がみられたが, 循環動態は安定していたため経過観察とした。その後, 経時的に超音波検査で腹腔内出血減少を確認していたが, 第6病日に撮影したCTでCBが出現した。翌日に血管造影を予定したが6時間後にショックに陥ったためCTを再検すると, CBは消失し, 脾臓が破裂し, 腹腔内出血をきたしていた。緊急開腹術で脾摘を行った。CBは脾内の持続性出血を捉えているものと思われ, これを認めたら緊急で血管造影を行うべきと思われた。

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© 2007 日本腹部救急医学会
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