日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
離島における肝細胞癌破裂の救命例2例
小林 信
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2008 年 28 巻 1 号 p. 71-74

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抄録

離島の困難な医療環境の中,新鮮全血輸血を行い救命した肝細胞癌破裂症例を 2例経験したので報告する。症例1:42歳,男性。5日間続く右季肋部痛が増強し来院。来院時血圧測定不能。エコーと腹腔穿刺で肝細胞癌破裂と診断し,血管塞栓術により止血。新鮮全血 12単位輸血。航空搬送した照射赤血球 10単位,新鮮凍結血漿20単位,濃厚血小板 25単位輸血。第 9病日転院し拡大右葉切除施行。症例2:83歳,女性。突然の右下腹部痛で来院。来院後心肺停止となり蘇生。エコーと腹腔穿刺で肝細胞癌破裂と診断し,血管塞栓術により止血。新鮮全血5単位輸血。航空搬送した照射赤血球8単位,新鮮凍結血漿10単位輸血。第65病日,肝S6部分切除施行。肝細胞癌破裂などの大量出血症例では,止血術と輸液,輸血により循環動態を安定させる事が極めて重要である。僻地離島の救急施設においては新鮮全血輸血も整備する必要がある。

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© 2008 日本腹部救急医学会
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