2008 年 28 巻 5 号 p. 739-742
内ヘルニアは術前診断や手術適応の判断に苦慮する例も少なくない。今回,内ヘルニアの2手術例を経験したので報告する。症例1:53歳男性。イレウスにて紹介受診。保存加療するも改善せず発症後7日目に開腹術を施行した。約2cm径の大網裂孔を介し網内へ嵌入した小腸を認め,裂孔を縫合閉鎖した。症例2:90歳男性。イレウスにて紹介受診。腹部CTにて盲腸周囲内ヘルニアを疑ったが腹部症状は軽度であり,厳重経過観察とした。入院4時間後に腹部症状増悪し開腹術を施行した。回盲部周囲に大網が癒着し,大網結腸間隙を介して小腸が傍結腸溝に嵌入していた。癒着によるヘルニア門を開放した。原因不明のイレウス例では,本症を念頭に置くべきである。内ヘルニアと診断された場合は手術を考慮し,診断が困難な場合は慎重に経過観察し,絞扼の初期徴候を認めた際には躊躇せず手術を行うべきと考えた。