日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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28 巻 , 5 号
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原著
  • 境 雄大, 須藤 泰裕
    2008 年 28 巻 5 号 p. 637-642
    発行日: 2008/07/31
    公開日: 2008/09/02
    ジャーナル フリー
    急性虫垂炎の診断および重症度評価におけるmulti-detector row CT(以下,MDCT)の有用性をMDCT導入前のsingle-detector row CT(以下,SDCT)施行例と後方視的に比較・検討した。入院時にCTを施行した虫垂炎疑診例47例(SDCT施行24例とMDCT施行23例)を対象とした。虫垂炎診断のCT所見として,6mm以上の虫垂腫大,虫垂壁の造影効果(全周性の同定,虫垂壁の部分的欠損),虫垂周囲脂肪織の濃度上昇,糞石,腹水・膿瘍を評価した。MDCT,SDCTのいずれも,6mm以上の虫垂腫大,虫垂壁の造影効果,特に部分的欠損が虫垂炎の診断に有用であった。MDCTはSDCTに比べて,虫垂壁の造影効果,特に全周性の同定,腹水・膿瘍の検出に良好な傾向がみられた。また,虫垂壁の性状の評価などからMDCTは虫垂炎の重症度診断の向上に寄与する可能性がある。
  • 原田 直樹, 中島 幸一, 佐竹 信祐, 山崎 良定
    2008 年 28 巻 5 号 p. 643-647
    発行日: 2008/07/31
    公開日: 2008/09/02
    ジャーナル フリー
    内ヘルニアは比較的まれな疾患であるが,その中でも大網に生じた異常裂孔に腸管が陥入する大網裂孔ヘルニアの報告は少ない。今回,われわれは大網裂孔ヘルニア嵌頓にて手術を行った6例を経験したので報告する。年齢は41歳から85歳で男性4人,女性2人で,Body Mass Index(以下,BMI)は18.8から27.6であった。陥入型式は山口分類1)でA型が5例,C0型が1例であった。3例に画像上大網裂孔ヘルニアを疑い腹腔鏡を先行した手術を行った。腸管壊死を認めた症例は4例あり,腸切除を必要とした。切除した腸管の長さは40cmから100cmであり,1例に術後重篤な合併症が発生した。手術既往のない腸閉塞に対し同疾患の鑑別診断として腹部CTは有用であった。また,内ヘルニアを疑う症例に腹腔鏡下手術は診断,治療の両面において優れた方法であると考えられた。
  • 三好 篤, 中房 祐司, 佐藤 清治, 宮崎 耕治
    2008 年 28 巻 5 号 p. 649-654
    発行日: 2008/07/31
    公開日: 2008/09/02
    ジャーナル フリー
    壊死性筋膜炎は皮膚・皮下組織に壊死を引き起こす細菌感染症であり,急激に発症・進行するため致死率が高い。術後の壊死性筋膜炎症例の特徴を明らかにする。開腹術後に壊死性筋膜炎と診断された7例の臨床像について検討した。平均年齢は64歳(46~84歳),男性6例,女性1例で,7例中6例に大腸手術が施行されていた。発症までの平均期間は7.3日(3~24日)であり,起炎菌はグラム陰性桿菌4例,MRSA3例であった。ほぼ全例に皮膚所見(壊死もしくは発赤),局所の圧痛およびCT検査で皮下ガス像を認めた。全例に広範囲壊死部debridementが施行された。死亡例は2例であり致死率は28.5%であった。生存例と比較し,死亡例では皮膚の壊死を伴っており,発症から処置までの期間が長かった。大腸手術施行例,免疫機能低下症例の術後1週間以内の高熱,急激なSIRSへの移行を認めた場合,本疾患を念頭において局所診察およびCTなどによる精査を行う必要がある。
特集
  • 古川 俊治, 和田 仁則, 菅沼 和弘, 北川 雄光
    2008 年 28 巻 5 号 p. 659-667
    発行日: 2008/07/31
    公開日: 2008/09/02
    ジャーナル フリー
    腹部救急診療では,事故や中毒などによる外因性の患者死亡や,重症の内因性疾患に対する診療行為の合併症などによる患者死亡が発生する。医師法21条は,異状死の届出義務を規定しているが,診療に関連して患者死亡が発生した場合に,どのような事例がこの届出義務の対象となるのかについては法医学と臨床の医師,法曹などの間で意見が対立し議論が重ねられてきた。現在国会において新制度成立のための法案が作られている。新制度では,(1)制度目的は医療関係者の責任追及ではなく,原因究明・再発防止にあること,(2)調査委員会への届出と医師法21条に基づく届出は重複しないこと,(3)行政処分は限られた事案について,個人の処分ではなく,システムエラーの改善や教育に重点を置いてなされること,(4)刑事事件の対象とされるのは故意・重過失等の悪質な事案に限られることなど,医療界の意見に相当程度配慮したものとなっている。新制度が施行されるまでの間は,明らかな過誤が疑われる場合には警察署へ届出を,客観的諸所見から合理的に死因が推定できない場合や遺族が疑念を懐く可能性がある場合などには警察署に相談をしておくべきだと考えられる。後者の場合には,全国8地域で実施されている「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」に調査・分析を依頼することもあわせて考慮されるべきである。
  • 新井 達潤
    2008 年 28 巻 5 号 p. 669-672
    発行日: 2008/07/31
    公開日: 2008/09/02
    ジャーナル フリー
    DNRは尊厳死と,無益な医療の回避という二重の意義を持つ。尊厳死・安楽死の観点からみると,最も人為的介入が少ない方法と考えられる。DNRの本来の意義からは,DNR指示が出されていても心肺停止に至るまでの医療の質に変化があってはならない。しかし,濃厚な治療が続けられ終末期が遷延した場合は,DNRの目的である尊厳死および無益な治療の回避が達成されなくなる。したがって DNRを事前に話し合うときDNRのみならず個々の生命維持治療法の中止,軽減等についても包括的に話し合っておく必要がある。
  • 真弓 俊彦, 渡邉 出, 有嶋 拓郎, 小野寺 睦雄, 高橋 英夫, 武澤 純, 勝又 義直
    2008 年 28 巻 5 号 p. 673-677
    発行日: 2008/07/31
    公開日: 2008/09/02
    ジャーナル フリー
    近年,終末期での診療方針決定が話題となっているが,終末期でのDNARの現状は充分明らかとなっていない。今回,DNARの実状を明らかにするために,名古屋大学医学部附属病院における2004年9月から1年間の死亡症例で実態調査を行った。15歳以上の死亡症例404例のうち,腹部疾患に起因する死亡は一般病棟181例,救急外来2例で,この181例を対象とした。DNARオーダーは,本人の書面によるもの1例,本人口頭8例,本人から家族への伝達4例,家族口頭114例,不明2例であった。DNARオーダーがなかった症例52例のうち46例は本人でDNARの判断が可能と考えられた。DNARオーダーがなかった症例で蘇生が行われたのは13例であった。慢性的な腹部疾患による終末期状態でも書面による意思表示はほとんど行われていないこと,本人の意思表示が可能な場合でもDNARオーダーがとられていない場合が多いこと,その場合でも蘇生が行われていないことが明らかとなった。厚労省研究班の結果等を加えて考察した。
  • 森脇 義弘, 杉山 貢, 鈴木 範行
    2008 年 28 巻 5 号 p. 679-683
    発行日: 2008/07/31
    公開日: 2008/09/02
    ジャーナル フリー
    医師は,万国共通のプロフェッションとして,社会的地位,報酬,自治権確保と引き替えに公衆と社会契約を結んでいると考えられる。一方,救急告知病院でありながら当直医の専門性やベッド状況,他の救急患者対応中などを理由とした事実上の診療拒否,通院中や経過観察中患者に他院受診を勧めることもある。外来を持たない3次救命施設である当センターで4年間に扱った106例の吐下血症例について,搬送先として当院が選択された経緯を分析したところ,直接搬送例は69%,通院中医療機関がない症例は24%で増加傾向にあり,病院通院中は33%で2003年以降に急増,診療所が12%で減少傾向にあった。救急告知病院が地域社会での役割を果たした上で,医療側から救急医療を有効に機能させるために社会や公衆が果たすべき役割を明示することが必要で,各学会などによる本邦に馴染んだ形での倫理綱領の作製も重要と思われる。
  • 原口 義座
    2008 年 28 巻 5 号 p. 685-691
    発行日: 2008/07/31
    公開日: 2008/09/02
    ジャーナル フリー
    医療は,常にリスクと背中合わせの行為であり,なかでも,腹部救急疾患に代表される緊急かつ重症度の高い疾患に対する医療では,そのリスクは高い。医療過誤・医療事故の可能性に対して,どうすべきか,すなわち,リスクマネージメントに関しての概要を提示した。考え方として,SHELLモデル,すなわち,ソフトウェア,ハードウェア,作業環境(environment),人間の要素からの考え方をベースに,安全管理への試みを,医療面以外の観点も踏まえて,提示した。またエラーの分類からの観点も対応を決定する上で重要であると考えられる。すなわち,(1)意図の有無からみたエラーの分類,(2)誤ったことを実行・遂行したエラー,すべきことをしなかったエラーという分類,(3)その他の観点からの分類を提示した。その上で,危険性を減らすには,(1)準備体制のありかた,(2)エラー発生時の直後の対応体制,(3)エラー発生その後の体制として,PDCA cycle,背景にある考え方等を提示した。安全管理にも,産業界の考え方,科学的裏づけ,分野別・専門職種別に追求すると同時に,各分野の協力という横の連携も重視すべきである。
症例報告
  • 村上 慶洋, 山本 和幸, 小出 亨, 村川 力彦, 北上 英彦
    2008 年 28 巻 5 号 p. 693-696
    発行日: 2008/07/31
    公開日: 2008/09/02
    ジャーナル フリー
    症例は17歳,女性。右下腹部痛を主訴に当科を受診した。右下腹部に圧痛および筋性防御を認めた。腹部CT検査にて右下腹部に径1cmの管腔構造および周囲脂肪織の濃度上昇を認め,急性虫垂炎を強く疑ったが,確定診断はつかず,診断と治療をかねて腹腔鏡下手術を施行した。右下腹部に大網に発生したと思われる大きさ約2cmの血腫様の腫瘤を認め,一部が腹壁に癒着していた。大網を一部含め腹腔鏡下に切除術を施行した。術後経過は順調で,術後4日目に退院となった。病理組織学的検査では血腫と線維増生を伴う炎症所見および壊死脂肪組織であり,腫瘍性病変等を認めなかった。腹部外傷の既往,抗凝固療法,血管性疾患の既往等なく,特発性大網血腫と診断した。特発性大網血腫は比較的まれな疾患であり,腹腔鏡下手術を施行した報告例は過去に1例のみであるため,若干の文献的考察を加え報告する。
  • 種村 彰洋, 五嶋 博道, 加藤 弘幸, 村田 泰洋
    2008 年 28 巻 5 号 p. 697-700
    発行日: 2008/07/31
    公開日: 2008/09/02
    ジャーナル フリー
    症例は81歳女性。10日間の便秘,腹痛,嘔吐を認め来院した。腹部は著明に膨隆し圧痛を認めた。CTではS状結腸には便塊が多量に貯留し,それより口側の結腸は著明に拡張していた。注腸透視では宿便によりS状結腸が閉塞していた。宿便による大腸閉塞と診断し双孔式人工肛門造設術を予定したが,人工肛門の粘膜は壊死しており閉塞性大腸炎による大腸壊死と診断し,拡大左半結腸切除術,上行結腸人工肛門造設術,S状結腸粘液瘻造設術を施行した。宿便による壊死性の閉塞性大腸炎は非常にまれであるが,外科治療にあたっては大腸閉塞の際には腸管壊死の可能性を念頭に置く必要があると考えられた。また手術に際しては正確な腸管切除範囲の確認,肛門側断端の人工肛門造設が肝要であると考えられた。
  • 瀬尾 雄樹, 岸川 浩, 井口 清香, 貝田 将郷, 西田 次郎, 森下 鉄夫
    2008 年 28 巻 5 号 p. 701-705
    発行日: 2008/07/31
    公開日: 2008/09/02
    ジャーナル フリー
    症例は77歳女性。嘔吐と腹痛を主訴に当院救急外来を受診し,小腸イレウスの診断にて緊急入院となった。イレウス管挿入のうえ保存的に経過観察したが,イレウス管の先端は十二指腸下行脚まで進むのみであった。イレウス管造影では,トライツ靱帯にて後腹膜に固定されるべき十二指腸水平脚が右側へ捻転して捻転部口側の腸管の狭小化を認め,corkscrew sign陽性と考えられた。十二指腸の後腹膜への固定不全により生じた続発性小腸軸捻転が疑われた。手術適応と考えられ,開腹術を行う方針となったが第30病日に小腸透視を行ったところ捻転は自然解除されていた。その後イレウス症状なく順調に経過したため退院となった。小腸軸捻転症はまれではあるが急性腹症の鑑別疾患として念頭に入れるべき疾患である。今回われわれは自然解除した成人発症続発性小腸軸捻転症の1例を経験したので報告する。
  • 野口 純也, 中本 充洋, 森田 圭介, 児玉 孝仁, 井原 司, 岡部 正之
    2008 年 28 巻 5 号 p. 707-710
    発行日: 2008/07/31
    公開日: 2008/09/02
    ジャーナル フリー
    イレウス管が誘因と考えられた,腸重積症の2例を経験した。症例1は44歳,男性。小腸軸捻転症に対し捻転解除および回腸部分切除術を行い,イレウス管を回腸末端まで誘導しステント目的で留置した。術後8日目にイレウス管を抜去するも,その翌日より嘔吐が出現した。CT検査にて腸重積症と診断し,緊急手術を行った。症例2は80歳,男性。イレウス管挿入にて症状が一時改善するも,再び腹痛が出現した。CT検査にてイレウス管が挿入されている上部小腸の腸重積症と診断し,緊急手術を行った。イレウスの際の腸管内減圧や癒着剥離術後のステントを目的としてイレウス管が用いられるが,それを誘因に腸重積症を発症することがあるため注意が必要といわれている。イレウス管による合併症として,腸重積症を常に念頭に置く必要があると考えられた。
  • 新名 一郎, 千々岩 一男, 矢野 公一, 永野 元章, 旭吉 雅秀, 大内田 次郎
    2008 年 28 巻 5 号 p. 711-715
    発行日: 2008/07/31
    公開日: 2008/09/02
    ジャーナル フリー
    大腸憩室出血に対し,動脈塞栓術後早期に腸管切除術を行い,良好に経過した症例を経験した。症例は56歳,男性。下血を主訴に来院し,精査加療目的で入院となった。翌日に大量の下血を認め,ショック状態となり,緊急大腸内視鏡検査を施行した。活動性の出血は確認できなかったが,上行結腸に憩室が多発し,大腸憩室出血を疑った。輸血によってバイタル・サインは安定し保存的に経過をみたが,その後も下血は続いた。確定診断と治療のため血管造影検査を施行し,回結腸動脈の分枝にextravasationを認めたため,同部位に塞栓術を施行した。これにより止血は得られたが,腸管壊死が危惧されたため翌日開腹し,結腸右半切除術を行った。切除標本では,塞栓術を行った領域に全層性の壊死性変化を認めた。大腸憩室出血に対する塞栓術後は,再出血のみならず腸管壊死の可能性も考慮し,早期手術も念頭に置くべきと考えられた。
  • 三井 章, 桑原 義之, 木村 昌弘, 石黒 秀行, 小川 了, 藤井 義敬
    2008 年 28 巻 5 号 p. 717-720
    発行日: 2008/07/31
    公開日: 2008/09/02
    ジャーナル フリー
    症例は36歳,女性。主訴は腹痛。開腹の既往はなし。徐々に増強する腹痛にて本院を受診。急性腹症の診断にて入院となった。入院後のCT検査にて子宮広間膜裂孔ヘルニアと診断し,同日緊急手術を行った。右子宮広間膜に直径約2cmの裂孔がみられ,同裂孔に回腸末端より口側60cmの部位から約30cmにわたる小腸が嵌入していた。嵌入していた小腸の血行障害は軽度で同部を還納し,裂孔を縫合閉鎖し手術を終了した。術後経過は良好で第10病日に退院した。子宮広間膜裂孔ヘルニアは子宮広間膜に生じた異常裂孔に起因する内ヘルニアでまれな疾患である。術前診断は困難とされ,その診断の遅れから嵌入腸管が壊死をきたし腸切除が必要となることも多い。今回CTにて早期診断し得た子宮広間膜裂孔ヘルニアの1例を経験したので文献的考察を加え報告する。
  • 前田 敏樹, 横尾 直樹, 重田 孝信, 竹本 研史, 安田 勝太郎, 北村 好史, 吉田 隆浩, 北角 泰人
    2008 年 28 巻 5 号 p. 721-724
    発行日: 2008/07/31
    公開日: 2008/09/02
    ジャーナル フリー
    門脈ガス血症 (portal venous gas : 以下, PVG) を呈した非閉塞性腸管虚血症 (non-occlusive mesenteric ischemia : 以下, NOMI)の症例を経験したので報告する。患者は67歳・女性で,突然の腹痛で救急外来を受診した。CTでPVGを認めたが,代謝性アシドーシスや壊死による逸脱酵素の上昇はなく,腹部所見も比較的軽度であったため保存的治療を選択した。その後,反跳痛が出現し,圧痛の増強,CK上昇もみられたため緊急手術を施行した。手術所見では,回腸末端に散在性の小腸壊死を認め,小腸部分切除術を施行した。さらに,肛門側腸管の粘膜には潰瘍性変化がみられたため,回盲部切除を追加し,回腸上行結腸端々吻合を施行した。PVGを伴ったNOMIで腸管壊死を生じたが,速やかな手術により救命し得た。腸管壊死の存在を正確に判断することは救命にとって重要である。
  • 近藤 成, 坂下 吉弘, 服部 晋司, 上田 祐華, 矢野 雷太
    2008 年 28 巻 5 号 p. 725-729
    発行日: 2008/07/31
    公開日: 2008/09/02
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,Meckel憩室の軸捻転により腸閉塞をきたした1症例を経験したので,報告する。症例は32歳女性で,主訴は下腹部痛。造影CTにて腹部に著明に拡張して最大径が7cmになった小腸ループを認めた。著明な腸管拡張を伴う紋扼性イレウスと診断し,緊急手術を施行した。回腸が紡錘状に拡張し,捻転して閉塞しており,腸切除を行った。病理組織検査にて,回腸粘膜から粘膜下層にかけて固有胃腺を認め,Meckel憩室と診断した。捻転をきたすMeckel憩室は,憩室の径が大きく頚部でくびれを持つことが多いが,本症例の憩室は明らかなくびれを有しておらず,憩室の付着した回腸全体が紡錘状に拡張しているような形態であり,捻転の機序としてまれであった。開腹歴のない,若年者のイレウスについては,Meckel憩室の関与を念頭に置くことが,重要であると考えられた。
  • 徳光 幸生, 橋本 憲輝, 友近 忍, 得能 和久, 徳久 善弘, 山本 滋, 岡 正朗
    2008 年 28 巻 5 号 p. 731-734
    発行日: 2008/07/31
    公開日: 2008/09/02
    ジャーナル フリー
    症例は34歳,妊娠28週の経産婦。右下腹部痛を訴え当院産婦人科を救急受診したが,理学および検査所見上,婦人科疾患は否定的であり,急性虫垂炎の疑いで同日当科紹介となった。腹部超音波検査上,腫大した虫垂は描出されず,造影剤の使用を避け,単純CT検査を施行したが虫垂炎の確定診断は困難であった。そのため腹部骨盤部MRIを施行したところ,虫垂の腫大およびT2強調脂肪抑制像で周囲の高信号域を認め,急性虫垂炎と診断し,同日虫垂切除術を施行した。術後の経過は良好で早産することもなく術後13日目に軽快退院となった。MRIの虫垂描出能は高く,また放射線被爆もないことから,超音波検査での虫垂描出が難しく造影CT検査の施行が困難な妊娠中の急性虫垂炎症例には,診断および手術適応の決定に有用であると考えられた。
  • 田島 雄介, 石橋 敬一郎, 岡田 典倫, 傍島 潤, 北岡 斎, 宮崎 達也, 横山 勝, 松木 盛行, 石田 秀行, 秦 怜志
    2008 年 28 巻 5 号 p. 735-738
    発行日: 2008/07/31
    公開日: 2008/09/02
    ジャーナル フリー
    上部消化管造影後に生じた,横行結腸癌の口側穿孔によるバリウム腹膜炎の1救命例を経験したので報告する。症例は64歳,男性。腹部膨満感を主訴として近医を受診した。バリウムで上部消化管造影を受けた翌日,突然,腹痛が出現し,他院を受診した。腹部全体に腹膜刺激症状を認め,腹部CT検査でfree-airと腹腔内全体にわたるhigh densityな液体の貯留を認めた。汎発性バリウム腹膜炎と診断され,当科を紹介された。緊急手術を行ったところ,脾弯曲側の横行結腸に鶏卵大の腫瘍が存在し,口側約15cmに5cm大の穿孔とバリウムを混じた多量の糞便を腹腔内全体に認めた。腹腔内を生理食塩水30Lで洗浄し,横行結腸切除・口側人工肛門・肛側粘液瘻造設,腹腔ドレナージを施行した。術後PMX-DHPを含む集中管理を要したが,第33病日に軽快退院した。横行結腸の腫瘍はstage IIIB(TNM分類)の中分化腺癌であった。術後11ヵ月の現在,再発の徴候を認めていない。
  • 藤解 邦生, 栗栖 佳宏, 赤木 真治, 加納 幹浩, 渡谷 祐介, 田中 智子
    2008 年 28 巻 5 号 p. 739-742
    発行日: 2008/07/31
    公開日: 2008/09/02
    ジャーナル フリー
    内ヘルニアは術前診断や手術適応の判断に苦慮する例も少なくない。今回,内ヘルニアの2手術例を経験したので報告する。症例1:53歳男性。イレウスにて紹介受診。保存加療するも改善せず発症後7日目に開腹術を施行した。約2cm径の大網裂孔を介し網内へ嵌入した小腸を認め,裂孔を縫合閉鎖した。症例2:90歳男性。イレウスにて紹介受診。腹部CTにて盲腸周囲内ヘルニアを疑ったが腹部症状は軽度であり,厳重経過観察とした。入院4時間後に腹部症状増悪し開腹術を施行した。回盲部周囲に大網が癒着し,大網結腸間隙を介して小腸が傍結腸溝に嵌入していた。癒着によるヘルニア門を開放した。原因不明のイレウス例では,本症を念頭に置くべきである。内ヘルニアと診断された場合は手術を考慮し,診断が困難な場合は慎重に経過観察し,絞扼の初期徴候を認めた際には躊躇せず手術を行うべきと考えた。
  • 諏訪 大八郎
    2008 年 28 巻 5 号 p. 743-746
    発行日: 2008/07/31
    公開日: 2008/09/02
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,女性。盲腸憩室炎の診断で当院外科へ入院。入院時の腹部CTで盲腸壁の浮腫,肥厚があり絶食,抗生剤の点滴で加療したが治療中に腹痛の増強あり,腹部CTの再検査で腸管壁の浮腫,肥厚の増悪を認めた。緊急手術も考慮したが高度の肥満,コントロール不良の糖尿病などが併存し,術後合併症の発生の可能性が高いこと,上行結腸まで浮腫が及んでおり腸管切除が広範囲に及ぶ可能性があること,膿瘍形成した時点での経皮的穿刺ドレナージも可能と考え抗生剤を変更し保存的治療にて経過を観察した。3日後の腹部CTで盲腸周囲膿瘍が明らかとなりただちにエコー下に穿刺ドレナージを行った。ドレナージチューブからの排膿は次第に減少した。1ヵ月後,大腸内視鏡検査を行い盲腸に憩室を認めたが炎症は消退していた。その後も炎症の再燃はなく糖尿病のコントロールを行いドレナージチューブを抜去,退院となった。
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