2008 年 28 巻 5 号 p. 735-738
上部消化管造影後に生じた,横行結腸癌の口側穿孔によるバリウム腹膜炎の1救命例を経験したので報告する。症例は64歳,男性。腹部膨満感を主訴として近医を受診した。バリウムで上部消化管造影を受けた翌日,突然,腹痛が出現し,他院を受診した。腹部全体に腹膜刺激症状を認め,腹部CT検査でfree-airと腹腔内全体にわたるhigh densityな液体の貯留を認めた。汎発性バリウム腹膜炎と診断され,当科を紹介された。緊急手術を行ったところ,脾弯曲側の横行結腸に鶏卵大の腫瘍が存在し,口側約15cmに5cm大の穿孔とバリウムを混じた多量の糞便を腹腔内全体に認めた。腹腔内を生理食塩水30Lで洗浄し,横行結腸切除・口側人工肛門・肛側粘液瘻造設,腹腔ドレナージを施行した。術後PMX-DHPを含む集中管理を要したが,第33病日に軽快退院した。横行結腸の腫瘍はstage IIIB(TNM分類)の中分化腺癌であった。術後11ヵ月の現在,再発の徴候を認めていない。