2009 年 29 巻 3 号 p. 427-435
1976年から約30年間,一貫して劇症肝炎の救命率の向上を目指して検討を重ね,独自に以下の3点の治療戦略を確立した。(1)当初活性炭の吸着能を利用した血漿灌流からスタートしたが,本治療がDICを誘発する危険があることからこれを中止し,血漿交換療法に切り換えた。しかし,血漿交換は昏睡覚醒効果に乏しいことから血漿交換に中分子量の除去特性に優れた“high performance膜”を用いた“血液濾過透析(現在ではon─line pre─HDF)”を組み合わせた強力な人工肝補助治療を確立した。(2)劇症肝炎を起こしている基礎疾患の治療(ウイルス性であれば抗ウイルス剤とステロイドパルスとサイクロスポリン併用剤の併用,自己免疫性と薬剤性はステロイドパルスと減量)により可及的速やかにGOT,GPTを低下させる。(3)予知式を作成し,劇症化を早期に予知し基礎疾患治療により劇症化を阻止する。以上により劇症肝炎の予後は有意に改善したと考えられる。