抄録
34歳,男性。腹満感と嘔気・嘔吐にて近医を受診した。胃潰瘍の診断にて,保存的に経過観察されていた。症状発症後10日目に再度前医を受診した際,心窩部より臍上縁の左側に,圧痛を伴わない腹部膨満を認めた。前医にて緊急血液検査や緊急腹部造影CT検査を施行したところ,腹腔内出血と診断され,当院へ精査加療目的にて搬送となった。当院にて緊急腹部血管撮影検査を施行したところ,正中弓状靱帯圧迫症候群が認められた。また,中結腸動脈左枝と左結腸動脈合流部近傍より,膵下縁を経由して腹腔動脈へ流入する異常血管を認めた。同部位の血管に不整や数珠状拡張,動脈瘤を認め,出血源と考えられ,マイクロコイルにて塞栓術を施行した。本症例はSegmental arterial mediolysisによる腹腔内出血と考えられ,若干の文献的考察を含め報告する。