抄録
食道静脈瘤における内視鏡的硬化療法を安全かつ効果的な治療とするために,MD-CT検査を用いて側副血行路解剖解析から血行動態分類を行った。供血路が左胃静脈である49症例を対象に,MD-CT検査で詳細に血行動態を検討したうえで,3D-CT画像を作成し側副血行路解剖解析を行った。傍食道静脈の発達程度により3型に分類した。I型はPEVが発達していない,II型はPEVが発達し,PEV径が食道静脈瘤径(EV径)と同等以下,III型はPEVが発達しEV径よりも太いものである。頻度はI型13例,II型20例,III型16例であり,PEV発達例が73.5%に認められた。合併症,再発に関与する貫通静脈は18例(36.7%)に検出された。治療はI型では供血路根部までの塞栓が必要であるが,II・III型ではPEVと供血路の交通部分までを塞栓でよい。特にIII型では,PEVとの交通が把握できていなければ,必要以上に硬化剤を注入することになり安全性の点から注意を要する血行動態である。MD-CT検査により分類可能なPEVからみた血行動態分類は,安全かつ適切な治療方針をたてることができ有用であると考えられた。