日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
Print ISSN : 1340-2242
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特集:門脈圧亢進症の診断と治療
長期治療成績からみた経頚静脈的肝内門脈静脈短絡術(TIPS)の適応
成高 義彦小川 健治島川 武五十畑 則之浅香 晋一村山 実山口 健太郎塩澤 俊一吉松 和彦勝部 隆男上野 恵子磯部 義憲
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2009 年 29 巻 7 号 p. 999-1005

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抄録
TIPSの適応について,当科での長期治療成績を中心に検討した。対象は1993年より2007年までにTIPSを施行した20例,適応は難治性腹水13例,難治性静脈瘤5例,難治性胸水1例,PHG 1例であった。方法は肝静脈と門脈枝の間にシャントを作成した。TIPS後の門脈圧は有意に低下した。脳症は10例認めたが制御可能であった。腹水に対する有効率は84.6%,胸水例は消失した。難治性静脈瘤は発赤所見が陰性化した。シャント機能不全は9例(45.0%)認め,開存率は1年68.8%,3年50.4%で,累積生存率は1年72.2%,3年46.8%,5年18.7%であった。アルコール性肝硬変例の予後は3年100.0%,5年66.7%と良好,ウイルス性肝硬変例や血清ビリルビン値が2.5mg/dL以上例の予後は不良で,死因は肝不全13例,胆道出血1例などであった。以上より,アルコール性症例はTIPSの良い適応であるが,ウイルス性症例や高度肝障害例への適応には慎重を要する。機能不全は高率に発生するが回復が可能で,早期発見が重要である。
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© 2009 日本腹部救急医学会
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