抄録
クリ果肉中の有機酸をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分割して9個のピークを得た。これらのうち,酢酸,蟻酸,コハク酸,リンゴ酸,クエン酸の5個の有機酸についてはp-bromophenacyl esterとして結晶化し,融点ならびに赤外吸収スペクトルを標品から得たものと比較して確認し,乳酸,α-ケトグルタール酸をペーパークロマトグラフィーによって推定した。
1966年度と1967年度の各品種ともクリ果中の有機酸はリンゴ酸とクエン酸が大部分を占め,次いで酢酸,コハク酸,α-ケトグルタール酸,蟻酸の順に少ない傾向にあったが,含有量は年度,品種間でかなりの差が認められた。ことに,夏期異常干ばつを受けた1967年度のものは前年に比べて含有量が極端に少なく,かつ酢酸含量が高い傾向にあった。