2010 年 30 巻 3 号 p. 469-472
症例は73歳の女性。腹部膨満,食欲不振と腹痛を主訴として近医を受診した。腹部X線で遊離ガス(free air)認め,消化管穿孔を疑われ当院を紹介され受診となった。既往歴に外傷性くも膜下出血後に伴う器質性精神病と糖尿病のため投薬治療が行われていた。CTではfree airと小腸に腸管気腫を認めた。腹痛が増強しており,消化管穿孔が否定できなかったため,緊急手術を施行した。開腹所見では腸管に穿孔は認めなかった。腸管嚢腫様気腫症(PCI)と診断しドレーンは挿入せず手術は終了とした。術後経過は良好で第13病日に退院した。しかし,術後1ヵ月で腹部膨満が出現し,腹部X線上free airを再び認めた。PCIの再発と診断し,絶食,酸素吸入療法を行い,PCIは軽快した。精神疾患を有する患者で腹腔内遊離ガスを伴ったPCIの報告例は少ない。再発することもあり十分な経過観察が必要である。今回,精神疾患を有する患者で腹腔内遊離ガスを伴ったPCIの1例を経験したので文献的考察を加え報告する。