日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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ISSN-L : 1340-2242
30 巻, 3 号
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原著
  • 猪狩 公宏, 落合 高徳, 西澤 真人, 太田 俊介, 伊藤 浩光
    2010 年30 巻3 号 p. 405-409
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2010/05/11
    ジャーナル フリー
    1998年1月から2007年12月までに,当院にて経験した外傷性小腸損傷および腸間膜損傷の58例について検討した。性別は男性47例,女性11例,平均年齢約51歳(18~81歳)であった。受傷機転として鈍的外傷50例,鋭的外傷8例であり,鈍的外傷中41例(82%)が交通外傷であった。手術適応は,明らかな腹膜刺激症状を認めるものや腹部CT検査にてfree airを認めるもの,または画像所見として腹腔内に液体貯留を認めるもののうちショック状態であるものとした。腹部CT検査による液体貯留の検出率は80.7%(57例中46例),free airの検出率は35.1%(57例中20例)であった。治療開始までの平均時間257分(10~1440分)であり,治療開始の遅延は術後に影響は及ぼさなかったが,術前の血小板数の低下は予後規定因子となりうることが示唆された。
特集:急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン
  • ─2004年から2009年におけるわが国の急性胆嚢炎の診療パターンの変化─
    関本 美穂, 大隈 和英, 今中 雄一, 吉田 雅博, 平田 公一, 真弓 俊彦, 高田 忠敬
    2010 年30 巻3 号 p. 413-419
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2010/05/11
    ジャーナル フリー
    【目的】2005年に発刊された「急性胆道炎の診療ガイドライン」は,わが国の急性胆嚢炎の診療の質の向上を目的として作成した。われわれはDPC厚生労働省基礎調査データ(以下,DPCデータ)を利用して,2004年から2009年の急性胆嚢炎の患者特性・診療プロセス・患者アウトカム・医療資源消費の経時的変化を検討した。【対象と方法】144病院より提供されたDPCデータを解析した。2004年4月から2009年9月に対象病院を退院した急性胆嚢炎患者を対象として,患者特性(年齢・性別・合併症),入院治療における診療プロセス(手術の選択や時期),患者アウトカム(死亡率),医療資源消費(在院日数・医療費)を検討した。ICD-10コードを利用して,データベースから急性胆嚢炎のために入院治療を受けた症例を同定した。同一患者が治療のために複数回入院している場合は,全ての入院を同定した。また手術(胆嚢摘出術・経皮的ドレナージ)の種類や時期を同定した。診療プロセスの経年変化を検討するために,最後の入院の退院時期で3群:(i)2004年4月~2006年3月,(ii)2006年4月~2008年3月,(iii)2008年4月~2009年9月)に分けて,患者の特性・手術の選択・手術時期・ドレナージの有無・死亡率などを比較した。【結果と考察】急性胆嚢炎患者の平均年齢は約66歳で,半数強が男性であった。また患者の80%以上が1回入院で治療を受けていた。手術治療を受けない患者の割合は約30%であった。手術を受けた患者の30~40%が入院当日か翌日に手術を受けていたが,半数の患者は入院から手術までの期間が5日以上であった。手術症例の死亡率は0.2~0.5%と低かったが,全体的な死亡率は経年的に高くなり,2008年~2009年の死亡率は2.0%であった。3つの期間で患者特性を比較すると,患者の平均年齢が高くなり,合併症スコア・胆道系悪性腫瘍の合併割合,全体の死亡率などに変化がみられた。しかし病院をマッチングして解析すると,死亡率に経年変化は観察されなかった。手術症例を対象とした解析では,腹腔鏡手術の実施割合が増加する傾向がみられ,初回入院から2日以内の手術の割合が増加した。術前の経皮的ドレナージの実施割合には,有意な変化はなかった。手術症例における入院回数は,1回入院が有意に増加し,2回入院は減少した。手術症例の死亡率には,変化がなかった。総医療費に経年変化はなかったが,手術症例の2008年~2009年における延在院日数は,2006年~2007年3月より約2日短縮した。これらの影響がガイドラインの影響によるものかどうかは,慎重に解釈しなくてはならない。しかしこのようにadministrative dataを利用すると比較的容易に診療パターンをモニターすることができる上,死亡率や再入院率などの患者アウトカム,さらには在院日数や医療費などの医療資源消費なども容易に検討できる。今後は,このようなデータを疾患重症度などの詳細な臨床データと組み合わせて解析することにより,診療の質のモニターに応用することができる。
  • 樋口 亮太, 安田 秀喜, 幸田 圭史, 鈴木 正人, 山崎 将人, 手塚 徹, 小杉 千弘, 平野 敦史, 植村 修一郎, 土屋 博紀
    2010 年30 巻3 号 p. 421-425
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2010/05/11
    ジャーナル フリー
    当科における急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドラインによる影響を検討した。2002年10月~2008年9月までの急性胆道炎(悪性腫瘍は除く)125例を対象として,ガイドライン発刊前後の治療方法と成績を検討した。急性胆嚢炎では発刊前より発刊後でドレナージから手術までの期間(11→2日,P 0.00015),内科から外科へ紹介されるまでの期間(23→2日:P=0.019),発症から手術施行までの期間(14→4.0日:P=0.00078),術後在院日数(10→6.5日:P=0.00078),全入院日数(25.0→9.5日:P=3.6×10-7)が減少し,早期手術(15→50%,P=0.00061)が増加した。急性胆管炎では,胆道ドレナージ施行率(44→89%,P=0.0044),内視鏡的治療により治療が完遂する症例が増加し,全入院日数は減少した(41→15.5日,P=0.045)。急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドラインにより,適切な治療が速やかに行われるようになり在院日数は減少した。
  • 山本 海介, 森嶋 友一, 里見 大介
    2010 年30 巻3 号 p. 427-432
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2010/05/11
    ジャーナル フリー
    「急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン」では,早期の腹腔鏡下胆嚢摘出術を推奨している。今回,このガイドラインを検証するため,当院における急性胆嚢炎に対する過去11年間(1998年1月~2008年12月)の緊急手術症例を前期(1998年1月~2005年12月)と後期(2006年1月~2008年12月)とに分けてretrospectiveに検討した。緊急手術の総数は85例,年平均で前期4.6例,後期16例であった。発症から手術までの日数は前期2.5日,後期2.0日へ,合併症は前期10.8%から後期8.3%へ,腹腔鏡手術における開腹移行率も前期21.4%から後期6.9%へとそれぞれ低下した。腹腔鏡手術と開腹手術の比較では,後期における腹腔鏡手術の出血量は46g,開腹手術では246gと有意に差を認めた(p<0.0001)。術後在院日数でも後期の腹腔鏡手術は開腹手術と比べ有意に短かった(6.8vs11.7日p<0.0001)。また,後期における腹腔鏡手術に関して,緊急手術と待機手術の比較を行うと,出血量,手術時間,術後在院日数で有意差はないものの,出血量は緊急手術で少ない傾向をみた。以上より,急性胆嚢炎に対し,早期に腹腔鏡下胆嚢摘出術を行うことで待機手術や開腹手術と比べ,出血量や術後在院日数の点で優位な結果が示された。したがって,急性胆嚢炎症例は,患者の全身状態が許す限り早期の腹腔鏡下胆嚢摘出術が推奨されると考える。
  • 植野 望, 今西 築, 速水 弘
    2010 年30 巻3 号 p. 433-436
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2010/05/11
    ジャーナル フリー
    2005年に出版された急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドラインに従い,発症早期の急性胆嚢炎に対して積極的に腹腔鏡下胆嚢摘出術(LC)を行ってきた。2006年1月から2008年12月に急性胆嚢炎に対し施行した腹腔鏡下胆嚢摘出術は55症例にのぼり,この間,開腹手術施行例,開腹移行例,術前の胆嚢ドレナージ(PTGBD)施行例はなかった。全症例における平均年齢は60.5歳,男女比は29対26で,初診時の白血球数ならびにCRPの平均値は12,318/μL,7.7mg/dLであった。発症後の術前待機期間は平均19.5日,平均手術時間は1時間48分,術後平均在院期間は7.7日であった。発症後4日以内のLC施行例をA群(13例),5日目から10日目までの施行例をB群(14例),11日め以降の施行例をC群(28例),さらに同時期の待機手術施行例をX群(96例)として比較検討した。C群においては,出血量は発症後超急性期のA群とほぼ同様にその他の群に比べて多く,平均手術時間も長い傾向にありA群を上回った。急性胆嚢炎の手術は発症後1~3週が難しい時期とされている事実を反映した結果であった。他方でB群においては,出血量が,A・C群に比べ少ない傾向にあり,有意差こそ認めなかったが約3分の1の量であった。加えて,手術時間もX群を除いて最も短かった。これらの事実は,ガイドラインで推奨された“比較的早期=発症後72から96時間以内”には,時間的猶予が存在する可能性を示唆する。
  • 飯田 義人, 福永 正氣, 津村 秀憲, 李 慶文, 永仮 邦彦, 須田 健, 菅野 雅彦, 吉川 征一郎, 伊藤 嘉智, 勝野 剛太郎, ...
    2010 年30 巻3 号 p. 437-441
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2010/05/11
    ジャーナル フリー
    胆嚢結石による急性胆嚢炎について,当施設でのガイドラインによる影響と適合性について自験例116例を検討した。ガイドライン導入後は,治療に関して,待機手術から早期手術を前提とした治療方針へと徐々に変化した。このため入院後の手術待機時間は平均16.8日であったのに対し2008年以降は5.0日と有意に短縮し,早期手術例も5%から32.5%へと増加を認めた。また,中等症,重症に対する治療も早期手術を優先するためPTGBDの施行率は減少した。ガイドラインによる重症度判定の適合性を検証するため,重症度による手術時間と出血量を比較した。手術時間は軽症と中等症では有意に中等症で延長し,出血量は重症度が上がるに従い増加した。重症度は手術時間,出血量に影響を与え,手術の困難度を予想するのに役立つものと思われた。ガイドラインの推奨する早期での腹腔鏡下胆嚢摘出術を,待機手術と比較すると,手術時間,出血量,開腹移行率,術後在院期間は有意な差は認められなかったが,全入院期間は早期手術で有意に短縮した。また,手術時間3時間以上または出血量300mL以上の手術困難例は早期,待機手術両者とも約16%で有意差は認められなかった。ガイドライン導入により当施設での急性胆嚢炎に対する診療は大きく変化した。早期手術でも開腹移行,合併症の頻度は待機手術に遜色なく,早期治療が可能であり,今後,ガイドラインに沿って早期手術がさらに普及するものと思われる。
  • 横江 正道, 真弓 俊彦, 長谷川 洋
    2010 年30 巻3 号 p. 443-447
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2010/05/11
    ジャーナル フリー
    最終臨床診断が急性胆管炎であった60例,急性胆嚢炎であった80例を用いて,国内版ガイドラインと国際版ガイドライン‘Tokyo Guidelines’を用いて,実地臨床におけるガイドラインの有用性を検討した。急性胆管炎では診断基準上,疑診以上の場合,国内版ガイドラインでは91.7%,国際版ガイドラインでは75.0%の症例が診断基準に合致した。重症度判定基準に関しては国内版ガイドラインでは中等症が最も多く(87.3%),国際版ガイドラインでは軽症が最も多い結果(80.0%)となった。急性胆嚢炎の場合,診断基準上,国内版ガイドラインでは確診以上で73.8%,疑診以上で87.5%,国際版ガイドラインでは確診以上で85.0%の症例が合致した。重症度判定基準に関しては国内版ガイドラインは中等症が最も多く(48.6%),国際版ガイドラインでは軽症が最も多い結果(48.5%)となった。国内版ガイドラインと国際版ガイドラインに関しては多くの部分で異なる部分があり,今回の両ガイドラインの最終診断例を用いての検討は,その長所・短所を理解するうえで有用であったと思われる。
  • 木村 康利, 永山 稔, 今村 将史, 秋月 恵美, 目黒 誠, 沖田 憲司, 川本 雅樹, 原田 敬介, 西舘 敏彦, 信岡 隆幸, 水口 ...
    2010 年30 巻3 号 p. 449-454
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2010/05/11
    ジャーナル フリー
    診療ガイドラインにおける重症度評価から,急性胆管炎自験例を再検討するとともに,治療困難例を提示し,問題点を言及する。症例は65歳,女性。コントロール不良の糖尿病を合併し,高度肥満(BMI 29.73)を伴っていた。膵頭部癌に対して亜全胃温存膵頭十二指腸切除(D2+∂)施行後,偽膜性腸炎(糞便中MRSA陽性),創感染(MRSA陽性)を生じ,その治療中の術後16病日に発熱,ショック状態となった。画像上,腹腔内に感染性の浸出液貯留や,胆管拡張を認めないものの,胆道系の炎症を示唆する血液生化学検査結果から,急性胆管炎と診断した。当初はドーパミンにより血圧維持が可能であったが,呼吸状態の悪化とともにカテコラミンの増量を余儀なくされた。術後19病日には,P/F比300以下の急性肺傷害(ALI)となり,その翌日には人工呼吸管理としたにもかかわらず200以下のARDSを呈した。急性血液浄化療法(PMX,CHDF)を施行したが,バイタルサインは改善せず,術後第21病日に死亡した。本症例の病態は,術後胆管炎の重篤化によるALI/ARDSであった。われわれはこれまで,急性胆管炎症例において肺,肝,腎の臓器障害を伴った際の予後は不良であること,また,障害臓器数と転帰は有意に相関することを報告してきた。とくに,急性肺障害に関しては,本症例のように重症化の要因となることもあり,重症度判定基準に取り入れるべきと考えられた。
症例報告
  • 本間 陽一郎, 山本 博崇
    2010 年30 巻3 号 p. 455-457
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2010/05/11
    ジャーナル フリー
    症例は18歳男性で,普通自動車運転中の衝突事故にて,当院救急外来に搬送された。S状結腸穿孔,腹直筋断裂と診断し,緊急手術を行った。開腹すると直腸Rsに穿孔部位を認めたため,ハルトマン手術と腹壁修復を行った。術後20日より創部は離解し,術後28日に正中創に小腸瘻を形成した。術後35日目よりVacuum Assisted Closure(以下,VAC)を導入し,約1ヵ月で創部の治癒は進み,小腸瘻にパウチを装着し経口摂取が可能となった。栄養状態を改善したのち,術後214日に瘻孔腸管の切除と人工肛門の閉鎖を行うことができた。VACは離解創に対する使用は一般的だが,小腸瘻を伴った離解創に対しても有効な治療法であったため報告する。
  • 徳毛 誠樹, 村岡 孝幸, 治田 賢, 岡 智, 大橋 龍一郎
    2010 年30 巻3 号 p. 459-461
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2010/05/11
    ジャーナル フリー
    患者は63歳・女性。腹部全体の激痛を主訴に救急車で近医を受診し,単純CT検査で腹腔内遊離ガスと腹水貯留を認め,急性汎発性腹膜炎の診断で当院に緊急搬送された。緊急開腹術を施行し,胃体部後壁の破裂による汎発性腹膜炎の状態であった。また,上部空腸に浸潤する膵体部腫瘍と複数の腹膜播種による小結節を認め,進行膵体部癌による癌性腹膜炎と考えられた。胃破裂の主たる原因は膵体部癌浸潤による上部空腸閉塞のための胃内圧上昇と推察した。しかし,頻回の嘔吐もなく胃体部後壁に破裂を生じた機序は不明で珍しい症例と考えられた。
  • 鬼塚 幸治, 伊藤 重彦, 田上 貴之, 山吉 隆友, 木戸川 秀生
    2010 年30 巻3 号 p. 463-467
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2010/05/11
    ジャーナル フリー
    盲腸軸捻転症は結腸軸捻転症の中でも5.9%と比較的まれな疾患である。今回われわれは盲腸軸捻転症の3例を経験したので報告する。症例1は57歳,女性。てんかん性精神病にて他院入院中,腹部膨隆,嘔吐出現し当院紹介された。CTで盲腸軸捻転が疑われ手術施行した。下腹部に小児頭大に拡張した盲腸を認めた。盲腸は遊離し術者から向かって時計回りに360度捻転していた。捻転整復後,右側腹壁に盲腸を固定した。症例2は79歳,女性。脳梗塞にて他院入院中,嘔吐あり当院紹介された。CTで盲腸軸捻転が疑われ手術施行した。盲腸は遊離しており向かって反時計回りに360度回転していた。整復後,腸管を右側腹壁に固定した。症例3は35歳,女性。交通外傷にて治療後,嘔吐出現し入院となった。入院後,腹部膨満,腹膜刺激症状が出現し,腹部X線にて腹部中央に拡張した結腸を認めた。絞扼性腸閉塞の診断にて手術施行した。盲腸は拡張し壊死に陥っていた。盲腸を中心にして向かって時計回りに540度回転していた。絞扼解除後も血行改善のみられなかった回腸から結腸の部分は切除した。
  • 桑田 亜希, 中光 篤志, 今村 祐司, 香山 茂平, 上神 慎之介, 藤解 邦生, 垰越 宏幸
    2010 年30 巻3 号 p. 469-472
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2010/05/11
    ジャーナル フリー
    症例は73歳の女性。腹部膨満,食欲不振と腹痛を主訴として近医を受診した。腹部X線で遊離ガス(free air)認め,消化管穿孔を疑われ当院を紹介され受診となった。既往歴に外傷性くも膜下出血後に伴う器質性精神病と糖尿病のため投薬治療が行われていた。CTではfree airと小腸に腸管気腫を認めた。腹痛が増強しており,消化管穿孔が否定できなかったため,緊急手術を施行した。開腹所見では腸管に穿孔は認めなかった。腸管嚢腫様気腫症(PCI)と診断しドレーンは挿入せず手術は終了とした。術後経過は良好で第13病日に退院した。しかし,術後1ヵ月で腹部膨満が出現し,腹部X線上free airを再び認めた。PCIの再発と診断し,絶食,酸素吸入療法を行い,PCIは軽快した。精神疾患を有する患者で腹腔内遊離ガスを伴ったPCIの報告例は少ない。再発することもあり十分な経過観察が必要である。今回,精神疾患を有する患者で腹腔内遊離ガスを伴ったPCIの1例を経験したので文献的考察を加え報告する。
  • 甲斐 敬太, 小林 毅一郎, 浦田 雅子, 本村 友一, 能城 浩和, 宮崎 耕治
    2010 年30 巻3 号 p. 473-476
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2010/05/11
    ジャーナル フリー
    67歳男性。10年前に早期胃癌に対し幽門側胃切除(BillrothI法再建)の既往がある。突然の激しい下痢と腹痛を訴え,下部消化管穿孔の診断で緊急手術を施行した。術後集中治療を行ったが播種性血管内凝固が進行し,発症3日で死亡した。血液培養からA型Clostridium perfringens(C. perfringens)が同定され,穿孔部の腸管にも菌体を認めた。剖検での直接的な死因は敗血症であった。C. perfringens A型は食中毒の原因となり,腹痛,下痢を発症する。多くは24時間程度で軽快するが,敗血症をきたすと高度の溶血,播種性血管内凝固により致命的となる。死亡報告例のほとんどが基礎疾患を有しているが,本例は胃切除後以外に基礎疾患はなかった。C. perfringens感染症が腸管穿孔で発症することはまれだが,重度の下痢を伴う例では本症を念頭においた初期対応が重要である。
  • 佐野 真規
    2010 年30 巻3 号 p. 477-480
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2010/05/11
    ジャーナル フリー
    症例は72歳の女性。突然の嘔吐,腹痛を主訴に当院を受診した。20年前に胆嚢結石を指摘された既往がある。腹部単純線X線撮影で小腸ガスの貯留と,腹部computed tomography(CT)で小腸内の結石と胆道内ガス像を認めた。上部消化管内視鏡検査では十二指腸球部前壁に瘻孔を認め,胆嚢十二指腸瘻,胆石イレウスと診断した。結石の自然排石を期待し保存的治療を行ったが,腹痛増強を認めた。手術適応と判断し,翌日に腹腔鏡補助下に小腸内の結石を摘出した。
  • 岩瀬 史明, 松田 潔, 小林 辰輔, 菊池 広子
    2010 年30 巻3 号 p. 481-485
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2010/05/11
    ジャーナル フリー
    外傷による出血性ショックが原因となる非閉塞性腸管壊死はまれである。腹部鈍的外傷による出血性ショックが原因と考えられた非閉塞性腸管壊死症例を経験したので報告する。症例は69歳の女性。軽乗用車の助手席に乗車中に車が壁に衝突して受傷し,当院に救急搬送された。右腎損傷と下大静脈の損傷による出血性ショックのため,緊急手術を行い右腎摘出と下大静脈の修復を行った。術中に重篤なショックとなり出血コントロールのために腹部大動脈の用手遮断を行った。腸管・腸間膜に損傷は認めなかった。術後に腰椎骨折部の出血に対して動脈塞栓術を施行し,全身状態は安定した。第9病日腹部のドレーンから腸内溶液が流出したため再開腹術を行った。回腸末端部に穿孔を認め,粘膜の壊死していた回腸から上行結腸を切除し吻合した。病理所見では血管閉塞のない虚血性腸管壊死の所見だった。外傷による出血性ショックが原因で腸管の虚血壊死を起こしたと思われた。
  • 春木 伸裕, 佐藤 篤司, 杉浦 正彦, 呉原 裕樹, 辻 秀樹
    2010 年30 巻3 号 p. 487-490
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2010/05/11
    ジャーナル フリー
    症例は1型糖尿病で通院中の55歳女性で,インスリン注射を3日前から自己中断し意識障害を呈し入院となった。血液検査にて糖尿病性ケトアシドーシスと診断し治療を開始した。翌日38℃の発熱と腹部膨満を訴えたため,緊急CTを施行した。腹水,門脈ガス,広範な腸管気腫を認め,腸管壊死による急性腹膜炎と診断し緊急手術を施行した。開腹すると,回腸末端の約200cmの回腸が分節的に壊死しており,S状結腸も暗紫色を呈し虚血に陥っていた。上腸間膜動脈および下腸間膜動脈は本幹から末梢まで拍動を触知できたことから,非閉塞性腸管膜虚血症(nonocclusive mesenteric ischemia: 以下,NOMI)と診断し,壊死した腸管の切除と下行結腸に人工肛門を造設した。NOMIは主幹動脈に器質的閉塞がないにもかかわらず,腸管に虚血あるいは壊死を生じる予後不良の疾患で,自験例は著明な脱水と,高血糖による高浸透圧が増悪因子となり,NOMIを発症したものと考えられた。
  • 野中 隆, 福岡 秀敏, 竹下 浩明, 日高 重和, 七島 篤志, 澤井 照光, 安武 亨, 永安 武
    2010 年30 巻3 号 p. 491-493
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2010/05/11
    ジャーナル フリー
    患者は50歳男性。性的嗜好にて肛門に長さ15cm,直径10cm程度の薬瓶を挿入。自身でペンチを用いて取り出そうとしたが摘出できず,ビンが割れて出血してきたため当院救急外来受診となった。腹部単純X線では小骨盤腔内にはまり込んだ破損したガラス瓶を確認し,腹部CTの3次元再構築画像でガラス瓶の破損部位などの詳細な状況を把握しえた。経肛門操作による摘出は困難と判断し,同日緊急手術を施行。肛門より破損したガラス瓶の入口部より自動吻合器(サーキュラーステイプラー)を挿入し,直腸RS部を切開し逆行性にガラス瓶を摘出した。直腸切開部は離断し人工肛門を造設し手術を終了した。直腸異物は,性的嗜好や事故により肛門から器具などが挿入され,抜去不可能となったものである。破損したガラス瓶摘出を行う際には,事前に形態や破損状況を確認し,状況に応じた適切な手段を選ぶ必要がある。
  • 大屋 久晴, 永田 二郎, 平光 高久, 西 鉄生, 森岡 祐貴
    2010 年30 巻3 号 p. 495-499
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2010/05/11
    ジャーナル フリー
    リンパ管腫は種々の大きさに拡張したリンパ管の限局性増殖であり,小児での頸部発生が多く,成人での消化管発生は比較的まれである。症例は72歳の男性で,下腹部痛や腹部膨満・排尿困難を主訴に2008年7月,当院を受診した。腹部CT検査で骨盤内腫瘤を指摘され,外科へ紹介となった。消化管造影検査では,回腸に9cm大の腫瘤による外部からの圧排像を,CT検査では骨盤内に97×78mm大の多房性腫瘤を認め,造影により隔壁の淡い造影効果を認めた。MRI検査では,内部に複数のfluid-fluid levelを形成した腫瘤を認めた。回腸腸間膜腫瘍による腸閉塞の診断で,全身麻酔下に腫瘍を含め小腸部分切除術を施行した。病理組織学的検査では,リンパ管腫の診断であった。経過良好にて,術後15病日退院となった。本症例につき若干の文献的考察を加えて報告する。
  • 渡邉 出, 梶間 敏彦, 川越 肇, 若原 正幸, 金子 揚, 清水 勝, 山田 泰広
    2010 年30 巻3 号 p. 501-504
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2010/05/11
    ジャーナル フリー
    FDG-PETが術前診断に有用であった肺癌虫垂転移による急性虫垂炎の1例を経験したので報告する。症例は67歳,男性。肺小細胞癌に対し化学,放射線療法を施行し外来にてフォロー中であった。右下腹部腫瘤を指摘され入院となった。腹部CTおよびFDG─PET検査にて肺小細胞癌虫垂転移による二次性虫垂炎を疑われ,全身症状の悪化もみられたため,緊急手術が施行された。手術所見では虫垂先端の穿孔が認められた。病理組織所見は小細胞癌の転移として矛盾しない像であった。悪性腫瘍転移による二次性虫垂炎の特徴は術前診断が困難なことと炎症の波及が急速であり,速やかな手術適応の決定が必要な事である。本症の術前診断および手術適応の決定において,他の検査で診断が困難であった場合に,FDG─PET検査は考慮すべき検査であると考えた。
  • 島崎 二郎, 渡辺 善徳, 長田 大志, 中地 健, 佐谷 徹郎, 小西 栄, 片野 素信, 田渕 崇文
    2010 年30 巻3 号 p. 505-508
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2010/05/11
    ジャーナル フリー
    62歳男性。腸閉塞の診断にて入院となる。上部および下部消化管内視鏡検査では異常は認めなかった。腸管減圧処置のためイレウス管を挿入し,造影検査を施行。回腸での狭窄像を認めたため,小腸狭窄の診断にて腹腔鏡手術を施行した。術中所見は,小腸が骨盤腹壁に索状物にて癒着しており,さらに回腸末端から口側約50cm部の小腸同士がループ状に癒着していた。腹壁との癒着を剥離後,臍部の皮膚切開を3cmに延長し,ループ状に癒着した小腸を腹腔外に露出し同部を切除・吻合した。病理組織学的検査にて,穿通性の潰瘍組織に多核巨細胞を認めたが,それ以外に特異的な病理所見は認められず単純性小腸潰瘍の診断となった。単純性小腸潰瘍はまれな疾患であり,診断に苦慮することが多い。原因不明の腸閉塞または小腸疾患が疑われる場合は,診断および治療を兼ねた腹腔鏡手術は非常に有用であると思われた。
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