抄録
膵外傷に対する主膵管損傷の診断は重要である。Endoscopic retrograde pancreatography(以下,ERP)は有効だが,侵襲性や合併症などの問題がある。当院ではComputed tomography(以下,CT)のみで膵損傷を診断しているが,膵周囲の腹水増量や膵断裂などの間接所見により緊急手術施行した症例は全例膵管損傷を認めた。治療では,膵液の確実なドレナージが重要である。膵頭部,体部,尾部に分けて,術式が選択される。可能な限り膵温存術を選択するべきであるが,全身状態,損傷原因,損傷範囲,年齢,術者の経験を考慮した上で,総合的に判断する必要がある。自験例のIIIb型膵損傷は5例であった。膵頭部損傷3例に対して膵頭十二指腸切除(2例),経胃的膵胞ドレナージ(1例),膵体尾部損傷2例に対して膵体尾部脾合併切除(1例),Letton &Wilson法(1例)を施行した。膵仮性胞を形成して胃と癒着した主膵管損傷例では,低侵襲な内視鏡的治療が可能であったが,胃胞内瘻術は極めて限られた症例のみに可能である。