抄録
<背景>「急性胆嚢炎の診療ガイドライン」では,白血球,CRP,ビリルビン,尿素窒素,クレアチニンと肝胆道系酵素がその重症度判定に有用とされ,重症例に対しては緊急手術,中等症以下では早期の腹腔鏡下手術を推奨している。当科における急性胆嚢炎症例について検討を行った。<対象と方法>2000年4月から2011年11月まで腹腔鏡下胆嚢摘出術で手術を開始した586例のうち,中等症胆嚢炎を併発していた212症例を対象とした。これらを腹腔鏡手術完遂群(LC群:n=186)と開腹移行群(OC群:n=26)に分類し,比較検討を行った。<結果>平均年齢(歳)は,LC群:55.0,OC群:60.9:p=0.06(以下同様),手術時間(分)は,135.2:202.0:p<0.05,出血量(mL)は,47.5:246.0:p<0.05,術後在院日数(日)は,3.3:9.5:p<0.05であった。術前の血液検査は,白血球(/μL):7,500:11,200:p<0.05,CRP(mg/dL):3.4:8.8:p<0.05,ビリルビン(mg/dL):1.2:2.2:p=0.12,尿素窒素(mg/dL):13.7:16.1:p=0.06,クレアチニン(mg/dL):0.78:0.75:p=0.69,AST(U/L):49.3:206.4:p<0.05,ALT(U/L):64.0:181.7:p<0.05,ALP(U/L):318.7:484.2:p=0.09,γGTP(U/L):112.8:316.3:p<0.05であった。胆嚢炎発症から手術までの時間(hr)は,72.5:578.9:p<0.05であり,これらを多変量解析すると発症から手術までの時間(cut off値72)に有意差を認めた(p<0.05)。<結語>発症から72時間以上経過症例は開腹移行への可能性が高いため,ガイドラインの追加項目となり得る。