2012 年 32 巻 4 号 p. 725-730
【目的】高齢者腹部緊急手術における手術部位感染(以下,SSI)の発生要因について検討した。【対象と方法】太田西ノ内病院外科で過去6年間に80歳以上で全身麻酔下に腹部緊急手術を施行した165例を,SSI発生の有無で群分けし,検討した。【結果】単変量解析では低栄養状態,腎機能障害および人工肛門造設術症例では全SSI発生率が有意に高かった。また腎機能障害,人工肛門造設術および結腸直腸手術で,切開創SSI発生率が有意に高かった。多変量解析を行うと,全SSI発生および切開創SSI発生において人工肛門造設術は独立した危険因子(Odds比 2.975および5.559)であった。【結語】高齢者における腹部緊急手術症例では,術前の低栄養状態,腎機能障害がSSIの発生と関連することが示唆された。また人工肛門造設術を選択した際には高率にSSIが発生することを念頭におく必要がある。