抄録
症例は77歳の女性。精神発達遅滞にて施設入所していたが,右下腹部腫瘤を指摘され,当科を紹介受診した。右下腹部に圧痛と熱感を伴う手拳大の硬い腫瘤を認めた。血液検査で炎症反応を認め,腹部造影CTでは右下腹部腹壁内に7cm大の不整低吸収腫瘤と腹腔内にも多発膿瘍を認めた。腹壁膿瘍に対して経皮的ドレナージを施行したところ,虫垂炎から波及した腹壁膿瘍と診断できた。ドレナージ治療により,膿瘍腔の著明な縮小を認め,第14病日根治術として手術を施行した。開腹すると虫垂先端が鼠径ヘルニア孔に埋没しており,鼠径管内へ嵌入した穿孔性虫垂炎により腹壁膿瘍を形成していた。虫垂切除術とドレナージ術を施行し,経過は良好であった。虫垂炎が鼠径ヘルニアを経路として前腹壁に膿瘍を形成することはまれであり,文献的考察を含めて報告する。