抄録
症例は,25歳,男性。2年前からCrohn病にて内服加療中であった。自動車運転中,衝突事故により腹部を打撲。受傷当時は無症状であったが,次第に腹痛が高度となり,受傷6時間後に当院救急外来を受診した。初診時,腹部全体に圧痛,腹膜刺激症状を認めた。腹部造影CT検査で,少量の腹水貯留とfree air,限局性の小腸間膜脂肪織の濃度上昇を認めた。外傷性腸管穿孔性腹膜炎と診断,受傷より12時間経過後緊急手術を施行した。回腸末端から約70cm口側小腸の腸管膜側に穿孔を認め腸管部分切除を施行した。切除標本では穿孔部には,Crohn病の線状潰瘍の形成を認め,交通外傷による腹部打撲によって同部位が穿孔したと考えられた。Crohn病の患者では比較的低エネルギーの外傷でも腸管穿孔をおこし得ると考えられ,腹部打撲診察の際には穿孔も念頭に置きながら診察を行う必要がある。