2013 年 33 巻 3 号 p. 615-619
症例は87歳,女性。嘔吐を主訴に当科を受診した。精査でBochdalek孔ヘルニアに合併した胃軸捻転症と診断した。全身状態を考慮し,まず上部消化管内視鏡による胃軸捻転症の整復を試みたが,不可能であったため手術を施行した。開腹するとBochdalek孔の大部分に結腸脾弯曲部と結腸間膜の脱出を認めたが,大網がBochdalek孔の一部をヘルニア門として陥入し,胃は大網に牽引され胃軸捻転症をきたしていた。開胸は行わず,陥入していた大網を腹腔内に還納し,大網の陥入していたヘルニア門の一部のみを胃の穹隆部で覆った。結腸脾弯曲部は陥入したままとした。胃固定術を併施し手術を終了した。術後経過は順調であった。本症例は高齢で全身状態が不良であり治療法の選択に苦慮した。ヘルニア根治術が標準術式とされるBochdalek孔ヘルニアだが,過大侵襲を避け軽快に導く術式も選択肢の一つとして念頭におくべきと考える。