症例は70代男性。出血性内痔核の手術目的で入院され,内痔核結紮切除術を施行した。術後5日目より発熱,白血球増多,11日目より下痢,14日目より手術創が感染し洗浄消毒を継続していたが,20日目から腹痛を自覚し,27日目にCTで腹腔内遊離ガス像がみられ腹膜炎の診断で緊急手術となった。回腸が5ヵ所で打ち抜き状に穿孔しており,回盲部を含め回腸を110cm切除した。既往に口腔内アフタ,陰部潰瘍があったため腸管ベーチェット病を疑ったが,穿孔した回腸の組織標本では非特異的な炎症像のみであった。また,術後サイトメガロウイルス抗体価が急上昇して下降する典型的な変化が認められたため,サイトメガロウイルス腸炎による回腸多発穿孔と診断した。現在術後4年以上が経過しているが再発の徴候はみられない。本症例は痔核術後にサイトメガロウイルスの初感染を起こしたと考えられ,痔核手術により免疫力が低下した結果発症したのではないかと推察された。