日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
鈍的脾損傷の経過中に発症した脾仮性動脈瘤の1例
大嶋 清宏萩原 周一村田 将人青木 誠金子 稔古川 和美中村 卓郎大山 良雄田村 遵一
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2013 年 33 巻 3 号 p. 641-645

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抄録

症例は63歳,女性。交通事故で受傷し,精査で開放性頭蓋骨骨折,第二頸椎骨折,左多発肋骨骨折・血気胸,外傷性脾損傷(IIIa型),左大腿骨骨折と診断した。外傷性脾損傷について同日緊急で血管造影を行ったが血管外漏出像はなく保存的加療とした。第9病日,排便後に気分不快あり,収縮期血圧60台/mmHg,脈拍40台/分であったため,ただちに輸液負荷と硫酸アトロピン投与したところ状態は改善した。直後に行った超音波検査で脾周囲の血腫増大はなかったが脾内の仮性動脈瘤が疑われた。第11病日に行った造影CT検査で脾内に直径約8mm大の仮性動脈瘤形成を認めたため同日緊急で塞栓術を施行した。近年,安定した循環動態の鈍的脾損傷に対しては非手術的管理(nonoperative management:NOM)が広く行われているが,NOMの重篤な合併症に遅発性脾破裂があり,その原因として脾仮性動脈瘤が注目されている。脾仮性動脈瘤は破裂すれば危機的状況に陥る可能性が高く,時機を逸しない処置が肝要である。

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© 2013 日本腹部救急医学会
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