日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
内視鏡的治療で軽快した主膵管損傷を伴う外傷性膵損傷の1例
高橋 哲也
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2013 年 33 巻 4 号 p. 727-730

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抄録

要旨:症例は53歳,男性。転倒後の腹痛のため当院へ搬送された。腹部dynamic CTで膵尾部は造影効果不良でその周囲に広がる血腫がみられ,主膵管損傷を伴う膵損傷と考えられた。手術療法を勧めたが拒否されたため保存的治療を行った。第10病日のMRPで主膵管は尾部で不明瞭化しており,またCTで膵尾部に2ヵ所の嚢胞性病変を認めた。第12病日より発熱と腹痛が出現し,第16病日のCTで膵嚢胞は増大しており,感染性仮性膵嚢胞と考えられた。保存的治療の限界であり手術時の視野確保目的に内視鏡的ドレナージを行うこととした。第17病日の内視鏡的逆行性膵管造影(ERP)では尾部主膵管は造影されなかった。嚢胞内へ経鼻的にpig─tailチューブを挿入したところ,ドレナージは効果的で嚢胞は消失した。第66病日にチューブを膵管ステントへ変更したが,腹痛や嚢胞の再燃はなく経過良好で第70病日に退院した。膵管損傷に対するステント治療は低侵襲で効果的であるが適応が不明確なためさらなる症例の集積が必要である。

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© 2013 日本腹部救急医学会
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