要旨:症例は80代女性。下痢と粘血便,著明な脱水所見を認めショック状態で当院へ救急搬送された。腹部造影CTで下腸間膜動脈支配領域の腸管の造影不良を認め広範な腸管壊死を疑い緊急手術を施行した。開腹すると横行結腸脾彎曲部から直腸S状部までの壊死を認め,結腸左半切除および人工肛門造設術を施行した。敗血症性および循環血漿量減少性ショック,播種性血管内凝固症候群を認めたが徐々に軽快した。術後10日目にサイトメガロウイルス腸炎を合併したが術後64日目に軽快退院した。急性腸間膜動脈閉塞症の多くは上腸間膜動脈塞栓症であり下腸間膜動脈閉塞症は稀である。その約半数が死亡という不良な転帰をとっているが,造影CTによる診断後の早期加療により救命し得た貴重な1例を経験したので報告する。