2013 年 33 巻 4 号 p. 781-785
要旨:遅発性外傷性横隔膜ヘルニアはまれな疾患で,本邦では鈍的外傷後に多く発症する。今回われわれは,PTFEパッチを用いて修復した遅発性外傷性横隔膜ヘルニアの1例を経験したので報告する。43歳男性,刺傷による胸部外傷から5年後に,腹部膨満感,腹痛を主訴に来院した。胸腹部単純X線・CTにて左横隔膜のヘルニア門と大網・横行結腸の左胸腔内脱出を認め,左遅発性外傷性横隔膜ヘルニア嵌頓と診断し,緊急手術を施行した。左胸腹連続斜切開にて開胸開腹し,左横隔膜欠損部から左胸腔内に脱出する横行結腸および大網を腹腔内へ還納した。左横隔膜欠損部は直径5cmの円形にトリミングしたPTFEパッチを用い修復した。術後1年3ヵ月経過し,再発兆候を認めない。横隔膜欠損部の直接縫合閉鎖が困難な症例において,PTFEパッチによる修復術は有用であると考えられた。