抄録
自閉スペクトラム症(ASD)児は表情認知の困難さが知られている。本研究ではASD を伴う難聴(HH + ASD)児の基本感情の表情認知力と情動語のラベリング力を明らかにした。対象はHH + ASD 8人,難聴(HH)15 人,ASD 12 人および定型発達(TD)40 人であった。以下の2課題を行い,課題得点をHH + ASD と他群間で比較した。また,得点と語彙力の関係を求めた。⑴表情認知課題:表情写真を基本感情に分類する。⑵情動語のラベリング課題:表情の絵を見て情動語を想起し記述する。その結果,HH + ASD では表情認知力もラベリング力もTD に比べ有意に低かった。2課題の結果と語彙力との関係は認められなかった。得点や回答方略がASD に似た点が見られた。HH は,2課題ともHH + ASD との有意な差が確認できなかったが,ラベリング力と語彙力の相関が認められ,語彙力が低いとラベリング力が低かった。HH + ASD は基本表情の読み取りの苦手さに加え情動語を用いた相手の感情の推測が困難であると考えられた。