抄録
要旨:症例は81歳,男性。2010年8月に他医で上行結腸ポリープの内視鏡切除を受けていた。2012年4月末に腹痛が出現し,右下腹部に限局し増悪したため当院を受診し,虫垂炎の診断で入院した。腹部X線写真では右下腹部にV字型に重なりあう2本の内視鏡用クリップがあり,CTで虫垂の先端に相当する位置にこれらを認めた。緊急開腹を行うと,虫垂は先端側が腫大し周囲に膿瘍が形成されていたので,虫垂切除術および腹腔ドレナージを行った。標本を観察したところ,2つのEZクリップのつめ部分が挟みあいV字型となっていたが,この交点の箇所が虫垂に刺さり穿孔を生じていた。脱落した内視鏡用クリップによる有害事象は極めてまれであるが,本例のように複数の挟みあうものが,虫垂あるいは憩室性構造に迷入し嵌頓すると,尖端部分による組織への圧迫損傷が加わり穿孔をきたしやすくなるため注意が必要である。