日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
Print ISSN : 1340-2242
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特集:腹部手術後の血栓症の予防と治療
肝胆膵外科手術におけるVTE予防薬の安全性,有効性の評価
林 洋毅森川 孝則元井 冬彦吉田 寛岡田 恭穂中川 圭水間 正道内藤 剛片寄 友海野 倫明
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2013 年 33 巻 7 号 p. 1157-1164

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抄録

要旨:【はじめに】静脈血栓塞栓症(VTE)予防ガイドライン策定および術後の静脈血栓症予防薬が登場したものの,肝胆膵外科術後におけるVTE予防薬の投与には抵抗感が強い。【対象】VTE予防薬を導入開始1年前の2008年1月以降の当科肝胆膵高難度手術症例466例を対象とし,術後VTE予防薬の安全性と有効性を評価した。【結果】DVT予防薬投与群は273例で,非投与症例は193例であった。入院中の術後出血イベントは,投与群で78例(28.6%)と,非投与群の17例(8.8%)に比べて有意に発生率が高かったものの軽微な出血が大多数であった。輸血や止血術を要した重篤な出血は投与群で4.4%,非投与群で5.2%と差を認めなかった。血栓塞栓症の発生頻度も投与群で4.0%,非投与群6.7%と差を認めなかった。【結語】VTE予防薬は術後の軽微な出血を増加させるが,肝胆膵外科領域においても安全に使用可能であった。

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© 2013 日本腹部救急医学会
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