日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
Print ISSN : 1340-2242
ISSN-L : 1340-2242
症例報告
大腸穿孔術後の敗血症に伴う全身浮腫と急性肺障害に対して五苓散が奏功した1例
添田 暢俊齋藤 拓朗竹重 俊幸五十畑 則之遠藤 俊吾冨樫 一智三潴 忠道後藤 満一
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 33 巻 8 号 p. 1281-1284

詳細
抄録

症例は85歳,女性。既往歴:84歳にANCA関連腎炎。現病歴:早朝,下腹部痛を主訴として救急搬送された。来院時ショック状態でCTにて骨盤内に腹腔内遊離ガス像を認めた。下部消化管穿孔による敗血症性ショックと診断し,緊急手術を施行。S状結腸の穿孔部を縫合閉鎖し人工肛門を造設した。術後は急性循環不全・呼吸不全に対し,昇圧剤投与,人工呼吸管理,好中球エラスターゼ阻害薬投与と血液浄化療法(PMX─DHP+CHDF)などを要した。術後2日目から全身浮腫と胸水貯留を伴う急性肺障害を認め利尿剤を併用したが,全身浮腫と呼吸状態は増悪した。そこで手足温,自汗,微熱,脈はやや沈で緊張が良い等の所見から五苓散を煎薬として経鼻胃管より投与したところ,全身浮腫と呼吸状態が速やかに改善し,術後4日目に人工呼吸器を離脱し得た。五苓散は腹膜炎術後の難治性全身浮腫と急性肺障害に対する新たな治療の選択肢の一つになりうる可能性がある。

著者関連情報
© 2013, Japanese Society for Abdominal Emargency Medicine
前の記事 次の記事
feedback
Top