2014 年 34 巻 1 号 p. 69-72
大腿ヘルニア嵌頓は高齢者で緊急手術の対象となることが多く,絞扼すると生命にも関わる。2003年1月から2011年9月までに当院で緊急手術を施行した大腿ヘルニア嵌頓症例47例をretrospectiveに検討し,非腸切除群と腸切除群に分類し,その臨床的特徴と予後不良因子を検討した。小腸が嵌頓していた42例(89%)のうち21例(44%)に腸切除が施行された。腸切除群は非腸切除群に比較し,イレウス症状が多く(p=0.01),手術に至る日数が長かった(p=0.01)。死亡例は4例(8.5%)で,軽快例に比較し,手術までの日数が長く,術前検査でTPの低値,CPK値,CRP値の有意な高値を認めた。多変量解析でCPK高値が独立した予後規定因子であった(p=0.0409)。大腿ヘルニア嵌頓による高齢者の腸管切除を回避し,死亡例を減少させるためには,早期診断と治療およびCPK高値に対する注意が重要である。