2014 年 34 巻 1 号 p. 81-86
日々の診療において,鼠径ヘルニア嵌頓に度々遭遇する。われわれは徒手整復の行えなかった症例に対し,臍窩に留置したトロカールから腹腔鏡観察を行って治療方針を決定している。腹腔鏡を用いることで鼠径管の方向に沿った効果的な体外から圧迫が可能で,腸管の状態を確認し,愛護的に臓器を整復することができる。整復後に腸管損傷の有無,腹水の性状から腹腔内汚染度を判断し,治療方針を決定している。感染リスクを認めない場合にはTAPP法を施行し,腸管切除を要する場合には臍窩創を延長し体外で腸管切除,吻合を行っている。感染が危惧される場合には,後日二期的TAPP法を施行している。また,初診時に徒手整復された症例についても,偽還納や遅発穿孔の有無を確認するため,翌日,腹腔鏡観察で治療方針を決定している。鼠径ヘルニア嵌頓に対する腹腔鏡観察は治療方針の定型化に有用であると考えられた。