抄録
大腸絨毛腫瘍は多量の粘液分泌に伴う脱水や電解質異常をきたすelectrolyte depletion syndrome(電解質喪失症候群:以下,EDS)を合併することがあり,癌化率も高い。今回われわれは,EDSを呈した直腸絨毛腺癌の1例を経験したので報告する。症例は76歳,男性。食欲不振,下痢,意識消失発作を主訴に救急搬送された。血液検査所見にて,腎機能障害,電解質異常を認め入院となった。毎日1,000mL以上の粘液便を認め,下部消化管内視鏡検査にて直腸に約2/3周性の巨大な絨毛腫瘍を認めた。EDSを呈した直腸絨毛腫瘍の診断で腹会陰式直腸切断術を施行し,術後は速やかに脱水や電解質異常が改善した。病理検査結果にて30%の割合で高分化型腺癌を認めた。術後8年現在,再発は認めていない。