抄録
症例は73歳男性,2010年に切除不能直腸癌に対しS状結腸双孔式ストマを造設後,化学療法が奏功し無再発無治療生存中であった。1週間前から抑うつ状態となり,自殺企図を繰り返すようになっていた。今回腹部より出血して倒れているところを発見され搬送された。腹部にためらい創を多数認め,ストマも損傷していた。しかしストマパウチ内に小腸片が多数認められたことから,視認はできなかったがストマを離断し腹腔内へ到達,小腸を体外に脱転し,切除したと考えられた。緊急開腹術を施行すると,ストマ刺創を確認することができ,またTreitz靭帯より40cmの空腸が40cm切除され,出血を伴っていた。双孔式ストマは全層にわたって損傷しており,同部を切除の上,下行結腸単孔式ストマを再造設した。本症例は非常に稀有な例であるが,自傷行為の症例では視認しえない事態が起こることを念頭に置き,対応することが望ましいと考えられた。