抄録
症例は62歳,女性。3~4年前に検診で高血糖を指摘されたが放置していた。5日前からの上腹部痛と嘔気,食思不振のため,当院を受診した。血液検査では高度の炎症反応と,糖尿病性ケトアシドーシスが認められた。腹部CTでは,肝下面に少量の遊離ガスを認め,膵頭部と十二指腸下行部との間に空気を含む低吸収値域が認められた。十二指腸穿孔を強く疑ったが,上部消化管内視鏡検査では明らかな異常所見は認められなかった。急性膵炎を示唆する所見は認めず,未治療の糖尿病に伴った特発性のガス産生性膵周囲膿瘍と診断した。インスリン持続静注とともに抗菌薬の投与を開始したが,4日目の腹部CTで膵頭部周囲の膿瘍の拡大と,膵尾部頭側にも新たな膿瘍が認められたため,緊急で開腹ドレナージ術を施行した。術後は特に問題なく経過し退院した。検索しえた範囲で,糖尿病に伴った特発性の膵周囲膿瘍の報告例はなかった。