2015 年 35 巻 5 号 p. 675-678
症例は79歳女性。自宅で意識不明となり当院へ救急搬送された。来院時ショック状態であり,低体温,著明なアシドーシス,血液凝固異常を呈していた。CT画像よりS状結腸穿孔による急性腹膜炎が疑われたため,ダメージコントロール手術(以下,DCS)の方針とし,緊急手術を施行した。開腹所見でS状結腸に広範な壊死と穿孔部を認めたが,腸間膜内の動脈拍動は触知可能であり非閉塞性腸間膜虚血(以下,NOMI)が疑われた。手術は壊死部結腸切除,腹腔内洗浄,チューブ腸瘻造設を施行した。術後は速やかに集中治療へ移行し,全身状態の安定が得られた後に再手術を施行した。再手術では結腸追加切除と人工肛門造設を施行した。最終的に患者は術後44病日にリハビリテーション目的に転院となった。DCSは主に重症外傷領域で提唱されてきた治療戦略であるが,その概念は予後不良な疾患であるNOMIに対する治療方針としても有用であると考えられた。