日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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ISSN-L : 1340-2242
原著
嵌頓鼠径部ヘルニアに対する腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術
野澤 雅之早川 哲史北上 英彦山本 稔中村 謙一渡邊 貴洋早川 俊輔野々山 敬介
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2015 年 35 巻 7 号 p. 863-867

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抄録

【目的】当院では成人の鼠径部ヘルニアに対して経腹的腹腔鏡下ヘルニア修復術(transabdominal preperitoneal laparoscopic hernia repair:TAPP法)を第一選択とし,2010年8月に嵌頓症例に対しても適応を拡大した。嵌頓鼠径部ヘルニアに対して腸管穿孔や大腸嵌頓を認めない症例をTension free法の適応とし,腹腔鏡手術の禁忌がなく安全に腹腔内操作が可能と判断された症例をTAPP法の適応としている。成人の嵌頓鼠径部ヘルニアに対するTAPP法の妥当性について検討した。【対象】2010年8月1日から2013年7月31日に手術を行った成人鼠径部ヘルニアは941例(1,034病変)であった。そのうち嵌頓鼠径部ヘルニア32例(32病変)を対象とした。【結果】平均年齢74.7歳(39~89歳),男性18例,女性14例であった。日本ヘルニア学会の鼠径部ヘルニア分類は,Ⅰ型15例,Ⅱ型1例,Ⅲ型16例であった。術式の内訳はTAPP法16例,鼠径部切開法12例(UHS法5例,Tissue to tissue法4例,Mesh Plug法3例),その他4例であった。Tension free法を行った患者のうち,TAPP法を施行した16例(TAPP群)と鼠径部切開法でアプローチした8例(UHS法5例,Mesh plug 3例)(鼠径部切開群)を比較すると,TAPP群は有意に出血量が少なく術後在院日数も短かった(p<0.05)。TAPP群の術後合併症として漿液腫2例,肺炎2例,腸閉塞1例を認めたが,メッシュ感染や再発は認めず,合併症発生率に差はみられなかった。【結論】腸管穿孔や大腸嵌頓のない嵌頓鼠径部ヘルニアに対して,TAPP法は妥当な術式であった。

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© 2014, Japanese Society for Abdominal Emargency Medicine
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