日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
保存的治療で治癒し得た十二指腸憩室穿孔の1例
高橋 雄大
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2015 年 35 巻 7 号 p. 869-874

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抄録

症例は52歳,男性,右側腹部痛を主訴に受診した。CTで膵頭部尾背側から右前腎傍腔に広がる後腹膜気腫と少量の液体貯留を認めた。上部消化管内視鏡検査では,Vater乳頭近傍の憩室壁の発赤や膿苔の付着,膿汁の排泄を認めた。十二指腸造影では,下行脚内側の憩室から後腹膜腔へ造影剤が漏出したため,十二指腸憩室穿孔による後腹膜膿瘍と診断した。白血球数が20,340/mm3と高値だったため手術も考慮したが,手術による胆道系の損傷や狭窄などの合併症が危惧されたこと,膿瘍腔が小さかったことなどから,十二指腸内のドレナージと抗生物質投与による保存的治療を行った。10日目の造影検査では,憩室外への漏出は認めなくなったため,14日目から食事を開始し,18日目に退院となった。その後5年以上経過したが再発は認めていない。今回われわれは,十二指腸憩室穿孔に対する保存的治療の1例を経験したので,文献学的考察を含め報告する。

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© 2014, Japanese Society for Abdominal Emargency Medicine
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