抄録
症例は80歳,女性。吐血と発熱の精査目的にて,老健施設より紹介受診した。うつ病の入院歴があり近年は認知症がみられた。腹部CT検査で上腹部に遊離ガス像がみられ,胃拡張と大量に胃内容物がみられた。保存的加療により遊離ガス像は消失し炎症反応は低下した。上部消化管内視鏡検査を施行したところ,胃内に多量の変性した手袋と胃角部前壁に穿孔したと思われる胃潰瘍がみられたが,手袋は内視鏡的にはほとんど摘出できなかった。そのため開腹手術を施行し手袋は完全に摘出でき,術後28日目に退院した。異食症による胃内異物について若干の文献的考察を加え報告する。