2016 年 36 巻 1 号 p. 73-77
内視鏡的乳頭括約筋切開術(endoscopic sphincterotomy:EST)は胆管結石除去や良性・悪性胆道狭窄に対するドレナージなど,胆膵治療内視鏡において基本となる手技である。EST施行時の出血は膵炎,穿孔とともに致死的となりうる偶発症の一つでありその対応と注意点を知ることは重要である。術中にみられる軽度の出血であれば冷水やエピネフリン加生理食塩水などの散布にて自然止血が得られることが多いが,より出血量が多い場合や後出血に対しては止血処置が必要となる。内視鏡的止血法の種類には,薬剤散布法,局注法,熱凝固法,そして機械的止血法としてクリップ止血法,バルーンカテーテルやmetal stentによる圧迫止血法がある。内視鏡処置無効例や多量の出血によりショック状態を呈している症例では迅速にIVRや外科的治療ヘの移行を検討すべきである。