2016 年 36 巻 4 号 p. 745-747
75歳,男性。受診当日18時頃腹痛を発症し近医受診。造影CT検査で上腸間膜動脈(superior mesenteric artery:SMA)塞栓症と診断され,外科的治療を念頭に当院紹介。造影CT検査ではSMAに血栓像をみとめるものの,下腸間膜動脈からのアーケードを介しSMA領域への血流がみられた。時間経過とCT検査所見より,まず経カテーテル的に血行再建を試みた。腹部血管造影にてSMA内に血栓と末梢血流の途絶を確認。挿入したカテーテルから血栓吸引を行い,暗赤色の血栓が多量に吸引され再開通を得た。腹痛は改善。フォローの造影CT検査でも腸管への血流は良好で,腸管壊死を免れた。昨今,血管内治療の適応は拡大し,血栓性病変に対する血栓吸引の手技やデバイスも改善が進んでいる。今後SMA塞栓症に対する有効かつ低侵襲な治療として,経カテーテル的血栓吸引療法が有力な選択肢となる場合があると考えられた。