2016 年 36 巻 4 号 p. 767-772
症例は61歳,男性。7年前に右腎細胞癌に対して右腎摘出術を受けている。当院泌尿器科で経過観察され無再発生存中であった。突然の上腹部痛を主訴として当院救急外来を受診した。上腹部に圧痛を認めたため,CT検査を施行した。単純CT画像で胆囊内に出血と思われる高吸収域を認め,造影CT早期相で胆囊壁に14mm大の濃染する腫瘤を認め,胆囊出血を伴う胆囊腫瘍と診断した。出血性胆囊腫瘍に対して開腹胆囊摘出術を施行した。摘出胆囊内には凝固血液と胆汁が混じった暗赤色の液体があり,18mm大の遊離した胆囊腫瘍が含まれていた。腫瘍基部は肉眼的には不明であった。病理組織学的に淡明細胞癌の所見であり,既往の腎細胞癌の胆囊転移と診断した。腎細胞癌胆囊転移は多血性腫瘍であり,胆囊出血による胆道閉塞,急性胆囊炎といった急性腹症を発症する可能性があるため報告する。